2020-01-01から1年間の記事一覧

「愛」「別れ」ウラジーミル・ソローキン

初ソローキン ○愛 1年くらい前、沖縄時代に書庫で冒頭のこれだけ読んで「脳みそをハンマーで殴られたような」(クリシェ!)衝撃を受けたのを覚えている。急転直下のオチ、「何かの機械に突然人間がすり潰されて肉塊になる」くらいしか覚えてなくて、今回わ…

「ガイジン」「こんなところで死にたくない」ラッタウット・ラープチャルーンサップ

タイの作家ラープチャルーンサップの短編集『観光』から、気分で2編選んで読んだ。 ○ガイジン 典型的なボーイミーツガールの骨格に、タイの観光小島の風景や混血児の葛藤が織り込まれている良作。 シンプルに良い。この短編集ってもしかしたら初めて読む海外…

『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン

野崎訳:光文社古典新訳文庫で読んだ。 世界観が面白い! シュルレアリスム・不条理文学なんだけど、不気味というよりむしろ小気味良い快活さの香る数々の小ネタ。 物語の大筋はド王道の恋愛悲劇で、細部のエピソードや描写に奇想が盛り込まれている。 50pま…

『恐怖の兜』ヴィクトル・ペレーヴィン

すぐに読める長篇を求めていて、全編チャット形式で読みやすそうだから手にとった。読みやすかった。 実験的なものが好きなので、チャット形式の小説に興味があったという理由もある。 端的に、いい意味でしょうもなくくだらない話だった。 間違っても傑作な…

『世界泥棒』(1)桜井晴也

31ページまで(239ページ中) web上の個人ブログで読める『愛について僕たちが知らないすべてのこと』と今のところほぼ同じ感じ。文体とか雰囲気とか なんだろう、ジュブナイル100%というか、「エモい」の権化というか、現代日本の若者(学生)の世界感覚と…

「症候群」大滝瓶太

『徳島文學 第三号』収録 大滝さんの書いた小説(短編しか読んだことがない)で、数理要素があからさまに出てこない、いわゆるふつうの"純文学"を読んだのはこれが初めてだと思う。読み味としては、noteやはてなブログで書いているエッセイ等の記事に近い。 …

「花ざかりの方程式」大滝瓶太

『SFマガジン2020年8月号』掲載これは……すごいな。かなり好き。 めちゃくちゃパワーズっぽい。というか、『ガラテイア2.2』しか読んだことがない(しかもまだ途中)ので、要するにガラテイア2.2っぽい。 ひとつの発想とか思考実験で勝負しているのではなく、…

『襲撃』レイナルド・アレナス

面白かった! <本文以外> まず表紙の帯から面白い。 「おそらくは20世紀に書かれた最も壮絶な本だ。」→ま〜た大げさな推薦文だなぁ 「──レイナルド・アレナス」→って著者本人の自画自賛かーいwwww 帯文でここまで笑わせてくれるアレナスほんとちゅき♡ でも…

『幽霊たち』ポール・オースター

130ページの中編だが一週間以上かかって読み終えた。 少なくとも今の自分にとっては面白くない。そこそこだった『ガラスの街』よりも更に面白くない。 こうした、いかにもなポストモダン小説、ミステリの構造をあざ笑うかのような作品はむしろ好きなはずだの…

『悪い娘の悪戯』(4)マリオ・バルガス=リョサ

テンポが良い。つまり場面や時制を省略する技術が高いことが、この面白さ、エンタメ性、ページターナー具合の主たる要因ではないか。1シーンでも10ページ以上も長々続けることはおそらくほとんど無く、どんなに重要なシーンも下手したら1ページ未満で片付け…

『悪い娘の悪戯』(3)マリオ・バルガス=リョサ

p.220 4章おわり。 フクダ怖すぎワロタ。自分の女が旧友とまぐわっているのを肴に自慰をする…そういうとこやぞ日本人!(主語がデカイ) そして友人退場ノルマも達成。哀しいなぁ……RPGのように、「僕」のもとに思い出の品が増えていく(”だいじなもの"は仕様…

『悪い娘の悪戯』(2)マリオ・バルガス=リョサ

7/16 2章おわり。ちょうどp.100まで。 ほんと「悪い娘(ニーニャ・マラ)」だなぁ彼女は。次の章では物語をまた別の国に移してどう展開し、ニーニャ・マラはどんな形で主人公の前に姿を現してくれるのか楽しみで仕方ない。 エンタメ性抜群とは言っても結構政治…

『悪い娘の悪戯』(1)マリオ・バルガス=リョサ

7/15 読み始めた。~64ページまで 第1章 チリからやってきた少女たち 面白い!文章が淀みなくすいすい入ってくる。ディテールの描写のためにかなりカタカナの固有名詞が盛り込まれているのに読みにくくなく、流し読みでも構わないからとにかく先を読みたい!…

『孤児』フアン・ホセ・サエール

モルッカ諸島 インドネシア 赤道付近 オーストラリアの北 西へ向かって航海している?どこから出発したのか 老人が数十年前の体験談を語る……という形式には、「絶対主人公は大人になる前に死ぬぞ……それで語りの位相が次元の狭間へと転落するぞ…」と身構えて…

『スロー・ラーナー』トマス・ピンチョン

○イントロダクション ピンチョン本人の語りは初めて読んだけどやっぱり小説と同じノリで面白い。自虐がバンバン決まるし結局エモに傾いちゃうし。そんなところが好きよ 小説は作者の人生経験の結晶であり、それを無視していた若かりし頃の自分は馬鹿だった的…

『肉体の悪魔』ラディゲ

光文社古典新訳文庫で読んだ。小学校で女子にラブレターを出しただけでその両親に通報され校長に説教をくらうって厳しすぎない?この時代のフランスはそうだったの?それともこの学校がとりわけ厳格だったか、はたまたフィクションか…… p.22 わけのわからな…

「息吹」テッド・チャン

短編集『息吹』に収録されている表題作「息吹」のみ読んだ。 ○息吹 「僕がなぜSFを好きになれないか」という懸案について多くの洞察が得られたという点においてのみ、読んで良かったと思う。 僕が本を読むときには、大きく分けて2つのモードを半ば無意識に使…

『わたしの物語』セサル・アイラ

おっ、アイラの小説にしては"ふつう"に事が運ぶな?と思っていたら数ページほどでテクストが意味不明というガーターに落ちた。 この人の文章はシュルレアリスムでも幻想文学でも不条理小説でもなく、怪文書。 いやこれ『文学会議』収録の2作品よりぶっ飛んで…

『ヴェネツィアに死す』トーマス・マン

1章 p7-16 文が読みにくい!長いし硬いし周りくどいし…岩波だと訳はどうなんだろう。『トニオ・クレエゲル』のときはそんな読みにくい印象なかったような。だいぶ前で覚えてないけど。読み通せるか不安だ… 50代のストイックな作家アッシェンバッハが散歩中に…

「クチュクチュバーン」吉村萬壱

文春文庫『クチュクチュバーン』の表題作を読んだ。 うーん、ぶっとんだ小説とは聞いていたが微妙。 たしかに書かれている内容はかなり異常ではあるけど、理解の埒外ではなく、むしろ親切でとっつきやすい印象。 ちゃんと小説的に数名の登場人物を描写して再…

『めくるめく世界』レイナルド・アレナス

2019/11/23読了 最初の1章が人称を変えて3連続で続くところ、ここがハナっから最高だった。アレナスを読んでるって感じ。 p.50~100あたりまで。メキシコの港に幽閉され、出航してから少しダレてきた? 如何せん牢獄に入れられすぎじゃないですかね…作者自…

「象の消滅」「カンガルー通信」村上春樹

・象の消滅(『象の消滅』収録の同名の短篇)読了日:5/8読書会の課題本で読んだ。『風の歌を聴け』以来、数カ月ぶりの村上春樹。 ストーリーはシンプル、文章は相変わらず読み易く、これぞ村上春樹の短篇って感じ。 ちょっとした非現実っぽい出来事が起きて…

「パン屋再襲撃」村上春樹

短篇選集『象の消滅』(黄色い本)収録の短篇「パン屋再襲撃」を読んだ。 「パン屋襲撃」を読む前に読んでいいのかと思いながら読むうちに、実は「パン屋襲撃」なんて作品は存在しなかったのではないか、「パン屋再襲撃」という題名から1回目の襲撃も前に書…

『アサッテの人』諏訪哲史

読了日 2020/1/16 行方不明になった叔父は、突然「ポンパ」などの意味のない言葉を発する「アサッテの人」だった。 彼の残した日記や彼の亡き妻(朋子)の証言などをもとに「私」は『アサッテの人』という小説を書こうとするが、彼のアサッテ同様の、言語や…

『最高の任務』乗代雄介

『群像』2019年12月号にて。 『生き方の問題』以来、この作家を読むのは2作目。芥川賞候補になったと聞いて読んだ。 親しかった叔母(ゆき江ちゃん)を3年前に亡くした景子は、大学の卒業式のあと、列席した家族に電車で群馬へ連れられる。どうやら「小学5年…

『十二月の十日』ジョージ・ソーンダーズ

○ビクトリー・ラン クジラックスの「がいがぁかうんたぁ」小説。未遂で良かったね。 3人の視点が次々に切り替わり、しかもそれぞれのパートで一人称と三人称が混ざっている。 最後は未遂だったとしてもトラウマは残るよってこと? にしてもこのポップな独白…