日本文学

『鏡の中は日曜日』殊能将之(2001)

『鏡の中は日曜日』 鏡の中は日曜日 (講談社文庫) 作者:殊能将之 講談社 Amazon 初・殊能将之 『ハサミ男』より先にこっちを読んでしまった わたしはミステリ読みではないので、この作家の名前を初めて見たのはギャディス『JR』が邦訳されたときの売り文句──…

『成瀬は信じた道をゆく』宮島未奈(2024)

成瀬は信じた道をいく 「成瀬」シリーズ 作者:宮島未奈 新潮社 Amazon 家に泊まりにきた親に「私の滞在中に読んで感想聞かせて」と手渡されたので、読んだ。大ヒットしている「成瀬」シリーズの第一作『成瀬は天下を取りにいく』を読んでいないのに、いきな…

『秋期限定栗きんとん事件』米澤穂信(2009)

『秋期限定栗きんとん事件』上下巻 2024/2/2~9(6日間) ※ 諸々のネタバレし放題なのでご注意ください。 ・前回までのあらすじ 破局サイコ―――!!!!!!! 上巻 秋期限定栗きんとん事件 上 小市民シリーズ (創元推理文庫) 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amaz…

『亡霊ふたり』詠坂雄二(2013)

亡霊ふたり (創元推理文庫 M よ 5-1) 作者:詠坂 雄二 東京創元社 Amazon 2023/2/23〜28(計4日) 2/23木 〜p.56 2/25土 ~p.106ヨイヨルさん主催のモクリ読書会「良い夜を読んでいる」で読み進める 2/27月 ~p.240 「別にそこまで心配してるわけじゃないけど…

『夏期限定トロピカルパフェ事件』米澤穂信

夏期限定トロピカルパフェ事件 小市民シリーズ (創元推理文庫) 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon 『夏期限定トロピカルパフェ事件』(2006) ・前巻の感想はこちら ※ふつうに謎解きのネタバレをするので注意 2024/1/31~2/1(2日間) 1/31(水) ・序章 あ、…

『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信

『春期限定いちごタルト事件』(2004) 春期限定いちごタルト事件 小市民シリーズ (創元推理文庫) 作者:米澤 穂信 東京創元社 Amazon 2024/1/27~28(2日間) ※真相のネタバレ普通にあるので注意 1/27(土) ・プロローグ・羊の着ぐるみ 高校時代がはるか遠く…

『繭の夏』佐々木俊介

『繭の夏』1995年刊行 繭の夏 (創元推理文庫) 作者:佐々木 俊介 東京創元社 Amazon 2024/1/24~26(3日間) 読むきっかけ ↑これで◎が付いていたので。(他にも何冊か注文したなかでもいちばん早く届いたので) ※ ふつうに真犯人とかのネタバレ書いてるのでご…

『密閉教室』法月綸太郎

新装版 密閉教室 (講談社文庫) 作者:法月 綸太郎 講談社 Amazon 原著1988年刊行(デビュー作) ※ふつうに犯人とかのネタバレしてるので注意 2024/1/21(日)~23(火) 1/21(日) なんかここ数日ミステリ読みたい気分なので読み始めた。なんでだろう? 小市民シリ…

『いいたいことがあります!』魚住直子

いいたいことがあります! 作者:直子, 魚住 偕成社 Amazon 偕成社, 2018年 半年くらい前に『考えたことなかった』を読んだが、その前作にあたる本作をようやく読めた。前巻の記憶がだいぶ薄れているためかもしれないが、こっちのほうが面白かったかな~~。 …

『あしたの幸福』いとうみく

あしたの幸福 作者:いとうみく 理論社 Amazon 理論社 2021年発行 「こんにちは、初めまして」帆波さんは人懐っこい笑顔で会釈した。その笑顔があんまり自然で……あたしはこの人を家に入れたくない、と思った。 p.88 「守られなければいけないのは、子どもです…

『考えたことなかった』魚住直子

家に泊まりに来た母親が読んでいたのに興味を持って読んだ。 考えたことなかった 作者:魚住直子 偕成社 Amazon 主に家事労働におけるジェンダーバイアスを扱った、啓蒙的な児童文学。 前作『いいたいことがあります!』(2018)の主人公:陽菜子(小6)の兄…

『ぼくは愛を証明しようと思う。』藤沢数希

わたしが読んだ本(文芸作品)について、わたしが抱いた感想を乱雑に書き留めてきた本ブログですが、本と読書に対する、より幅広い向き合い方を模索するために、「読んでいない本の感想を書く」とか「存在しない本の皆が口を揃えて言っているであろう感想を書…

『同時代ゲーム』(1)大江健三郎

大江健三郎全小説 第8巻 (大江健三郎 全小説) 作者:大江 健三郎 講談社 Amazon 自分が激推ししている無料同人ノベルゲーム『みすずの国』をやってくれた友人に、「これが好きなら『同時代ゲーム』を読んだほうがいい」と言われたのですぐに図書館へ向かった…

「ひかりごけ」武田泰淳

・武田泰淳「ひかりごけ」(1954) 新潮社『日本文学全集 33 武田泰淳』で読んだ。引用部のページ数もそこから。 日本文学全集 33 武田泰淳 新潮社 作者:新潮社 ノーブランド品 Amazon 羅臼ってなんか聞き覚えあるな、と思ってグーグルマップを開いたら、数…

『乙女の密告』赤染晶子

negishiso.hatenablog.com こちらの記事で絶賛されており、面と向かっても「じゃあ読んだほうがいいです」と言われたので図書館で読んだ(単行本のほう)。すごく良かった。日本にこんな作家がいたとは…… プロットも文章も非常に面白い。 バスが次のバス停に…

『十字架』重松清

※この記事の文章は、さきほどnoteに投稿したものと同じです。 十字架 (講談社文庫) 作者:重松清 講談社 Amazon 小学校の頃から重松清が好きだった。 特にこの『十字架』という小説は、自分にとってかなり印象深い本だ。これを読んでいたのは小学校を卒業する…

『踊る自由』大崎清夏

おとといの夜、雨が降りしきる新宿をわたしは歩いていた。わたしの隣にはお腹をすかせた人が歩いていて、わたしはその人に連れられるままに、ブックファーストへ向かった。地下の入口へ下る階段に、まるで映画の撮影をしているかのように、ダイナミックに寝…

「兎」「アカシア騎士団」金井美恵子

愛の生活・森のメリュジーヌ (講談社文芸文庫) 作者:金井 美恵子 発売日: 1997/08/08 メディア: 文庫 東京でフォロワーさんとオフ会したときに頂いた本 金井美恵子は自分からは読まないだろうな〜と思っていたのでありがてぇ 表題作ではなく、特にオススメさ…

『スワロウテイル人工少女販売処』(2)籘真千歳

hiddenstairs.hatenablog.com ↑の続き 第1部第2章(p.90)まで読んだ。 自治区の大半の人間と人工妖精は、世界一の福祉に守られ、時間を持て余している。(中略)憂いのない都市。安寧と平穏と平等と充実の詰まった二十八万区民だけの玉手箱。 p.71 お手本の…

『スワロウテイル人工少女販売処』(1)籘真千歳

スワロウテイル人工少女販売処 作者:籘真千歳 発売日: 2013/09/30 メディア: Kindle版 akosmismus.hatenadiary.com SF研の机に平積みされていたときから気になってはいたが、読もうと決心するきっかけは、みかんさんのおすすめのSF小説リスト↑に載っていたか…

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫) 作者:桜庭 一樹 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 kageboushi99m2.hatenablog.com 早速、soudaiさんの長篇ベスト100に入っていて未読だった桜庭一樹『砂糖菓子の弾…

「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」柴田勝家

雲南省スー族におけるVR技術の使用例 (早川書房) 作者:柴田 勝家 発売日: 2018/07/20 メディア: Kindle版 サークルの課題図書なので読んだ。20ページほどの短編 (上記Kindleではなく初出のSFマガジンで読んだ) 柴田勝家さんの著作を読むのは初 特段にこ…

「回転する動物の静止点」千葉集

proxia.hateblo.jp 千葉集さんのブログ「名馬であれば馬のうち」は前から読者登録して読んでいたのだが、先日投稿されたこちら↑の記事が特にめちゃ良くて、そういえばこの人SF短編の賞とってるらしいなー読んでみよっかな〜〜 という明瞭な動線で、その短編…

『推し、燃ゆ』宇佐見りん

読む前から薄々わかってはいたが、案の定じぶんがいちばん苦手なタイプの小説だった。所謂「現代の若者の感性を生々しく描く」系で、表現したいことが(全体を通しても、場面場面でも)わかり易く、それをお行儀よくこなせている優等生純文学。時代の要請で…

『旅する練習』乗代雄介

Twitterで「生き方の問題」を激推ししている人を見かけて文芸誌で読んでから、私のなかで乗代雄介はそこそこ興味のある作家になり、芥川賞候補になった次作「最高の任務」も読んだ。 興味があると言っても、2作ともめちゃくちゃ好きなわけではなく、好きな点…

「蟹」庄野潤三

2/26 庄野潤三「蟹」を読んだ。 海辺の宿にバカンスに行く5人家族の話。 語りの視点?がふわふわしている。対象に目を向ける(描写する)順番の独特さというか。「〜したり、〜したり」といった反復・並列の言い回しが心なしが多い気がする。蟹の「往きつ戻…

「ナチュラル・ウーマン」松浦理英子

河出文庫の松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』に入っている3つの作品のうち、表題作だけを読んだ。 1なんだか少女マンガか、女性作家のサブカル青年漫画でありそうな雰囲気の話だなぁとしか思わない。男の人に心を寄せられない私が出会った「運命の人」……!…

『最愛の子ども』松浦理英子

知り合いから「松浦理英子の『ナチュラル・ウーマン』は大傑作だから是非とも読んでほしい」と薦められ、そのときちょうど出張をしていたので地域の本屋を探して入店した。それほど大きな書店ではなく、敷地面積の半分はCDやDVDに占められているような店だっ…

「プールサイド小景」庄野潤三

庄野潤三『プールサイド小景・静物』新潮文庫 プールサイド小景・静物 (1965年) (新潮文庫) 作者:庄野 潤三 メディア: 文庫 こないだ大阪梅田から徒歩圏内の詩歌中心の古書店「葉ね文庫」の100円ラックで大量に買ったうちの1冊。「プールサイド小景」って名…

『世界泥棒』(1)桜井晴也

31ページまで(239ページ中) web上の個人ブログで読める『愛について僕たちが知らないすべてのこと』と今のところほぼ同じ感じ。文体とか雰囲気とか なんだろう、ジュブナイル100%というか、「エモい」の権化というか、現代日本の若者(学生)の世界感覚と…