『成瀬は信じた道をゆく』宮島未奈(2024)

 

 

 

 

家に泊まりにきた親に「私の滞在中に読んで感想聞かせて」と手渡されたので、読んだ。大ヒットしている「成瀬」シリーズの第一作『成瀬は天下を取りにいく』を読んでいないのに、いきなり続編から読んで大丈夫なの?と言い張ったが、「いいから読んで」と押しに負けた。まぁそんなに支障は無かった。

 

前作が成瀬にフォーカスを当てた物語だった(おそらく)のに対して、今作はファンディスク的な続編だと思った。成瀬の周囲の人々を語り手に据えて、いかに成瀬から好影響を受けるかを描く。

 

終始、成瀬上げというか成瀬SUGEE展開が続く作品なので、話の構成が一辺倒になりがち……かと思えばそんなこともなく、作者の技量がうかがえる。3章のクレーマーの人(呉間さん)とか中々すごい塩梅の人物造形だと思う。

 

web小説の「なろう系」が一般文芸にうまくアジャストした作品として見なせるのかもしれないが、まぁ文学史的に、こういう「異常で超人的な主人公が特に障害にぶつかることも苦悩することもなく自由に活躍していく話」というのは、換言すれば「英雄譚」なのであって、古代ギリシア文学らへんから連綿と続くものなのかもしれない。

(ただ、女性主人公である点を取って、リベラルな風潮の社会反映論的に解釈することも安直にできそうではある。とはいえ、女性主人公モノに限ってもやはり歴史的にいくらでも前例を辿って遡れるだろう。)


オタク的には、島崎を視点とした巨大感情焼きもち幼馴染百合モノとしておいしく”消費”できはする。うん。


Twitterを、何の留保もなく「X」と書く小説は初めて読んだので、ちょっと感慨深かった。(作中年代は少し未来の2025年とかの設定なので、たしかにその頃には馴染んでいるのだろう)

あと「代理エゴサーチ」という言い方は真似したい。