『酔いどれ列車、モスクワ発ペトゥシキ行』ヴェネディクト・エロフェーエフ

ヴェネディクト・エロフェーエフ『酔いどれ列車、モスクワ発ペトゥシキ行』(1970)

 

2022/7/24-29(4日間)

 


7/24 日

奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を』で盛んに言及されていて興味を持った。〈文学の冒険〉シリーズのひとつなので名前だけは知っていた。
20世紀のロシア作家に少なくともV.エロフェーエフがふたりいると知った。もうひとりは『モスクワのかわいいひと』などの作者(存命)。


〜p.78

めっちゃおもしろい。すき。

アル中の駄目男の圧倒的なひとり語り小説。自分と会話しだしたり、天使を幻視して会話したり(天使の台詞だけフォントが異なり、その理由付けまで言及される)、読者(あんた達)に話しかけてきたりする。しかし実験小説・ポストモダン文学というよりは、それらすべてが「酔っているから」と、"酒" に収斂していくさまがすごい。酒飲まないから向いてないんじゃないかと心配していたが、今のところ全然そんなことはなく、酒に疎い自分でも虜になる魅力があるというのか、あるいはもともと自分好みの小説というのか。

「弱い」男の自分語り小説ではあるが、鼻につく感じはあまりしない。親しみの持てる弱さ、駄目さ。ところどころ、世間の奴らをこけにして自分を逆説的に肯定したり、被害者ぶって自己憐憫するくだりもあるが、またふらふらと「弱さ」に戻っていってしまうのか、愛すべきダメさが通底している。


7/27 水
p.78~134
ひとり語りばかりかと思ったら、ペトゥシキ行の列車内であった他の酔いどれ男連中との変な議論が始まった。
マジでわけわかんなくて最高だな……
お酒をいっさい飲まない自分でもここまで面白いんだから、酒好きのひとが読んだらどうなっちゃうのだろうか。


7/28 木
p.134-195
孫息子と祖父どちらもヤバすぎるし、それを周囲がスルーしてるのも最高
突然出てきた女の人も最高
ずっとわけわかんないことを言っている。なんなんだこれは。最高。

 

7/29 金
p.195-237 読了

 

国書の「文学の冒険」シリーズで存在だけは知っていたが、奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を』で印象的に言及されていたので読んだ。〈アル中オトコのめくるめくひとり語り小説〉とでもいおうか、ずっと意味わかんないふざけたトーンで進む最高のブンガク。ロシア文学にも自分好みド真ん中のやつがあるんだ!という驚き。最後のオチまでアイラ『わたしの物語』だった。訳者あとがきでは様々な文化教養事項からの引用や聖書/キリスト教的な「読み」が解説されていたが、個人的にはまじでくだらねぇ人を喰っている文学の系譜として受容したい。