『ヴァインランド』(7)トマス・ピンチョン

hiddenstairs.hatenablog.com やや時間が空いてしまいましたが、12章をやっと読みました。 12章 (pp.315-383) <あらすじ> (フレネシに撃たれて?)サナトイドとなったウィード・アートマンの遍歴 84年、カリフォルニアの北の奥にある心霊スポット〈ブラ…

『別荘』ホセ・ドノソ

「わからない、わからないわ。その話には分厚いベールを掛けておきましょう」(p.60) 現代企画室から、ラテアメ邦訳界のシバニャンこと寺尾隆吉氏による翻訳で出ているホセ・ドノソ『別荘』を読んだ。550ページ、鈍器と呼べる小説を最後まで読み切れたのは…

『エバ・ルーナのお話』(1)イサベル・アジェンデ

エバ・ルーナのお話 (文学の冒険シリーズ) 作者:イサベル アジェンデ 国書刊行会 Amazon これまでに読んだアジェンデは、岩波文庫『20世紀ラテンアメリカ傑作選』に入っていた「ワリマイ」のみ。 『精霊たちの家』に挑む前に、こちらの短篇集に手を出してし…

「物語の終わり」レイナルド・アレナス

世界文学のフロンティア〈5〉私の謎 作者:今福 竜太 岩波書店 Amazon 邦訳があるアレナスのうちで最高傑作だと噂の短篇「物語の終わり」をやっと読んだ。岩波書店『世界文学のフロンティア 5「私の謎」』収録。杉浦勉訳 (本書ではレイナルド・アレーナス表…

『ヴァインランド』(6)トマス・ピンチョン

hiddenstairs.hatenablog.com つづき 10章と11章を読んだ。 10章 (pp.279-295) 〈秒速24コマ〉の回想・フレネシとブロックの出会い <あらすじ要約>プレーリー、タケシ、DLの3人はLAの高層ビルに入っているタケシの探偵事務所へたどり着く。そこで〈秒速2…

『ヴァインランド』(5)トマス・ピンチョン

hiddenstairs.hatenablog.com の続き 9章 (pp.189-278) DLがタケシ・フミモタと出会って相棒になるまでの話 <あらすじ要約> 彼女らを出会わせたのは例の富豪ラルフだった。日本で身に着けた忍術で幼くして格闘会のスターとなっていたDLに惚れ込んだラル…

『継母礼讃』マリオ・バルガス=リョサ

「ママのことさ、パパ、ほかのだれもテーマになんかならないよ」と、フォンチートは手を拍った。「タイトルのようなものもつけたよ。『継母礼讃』て言うんだ。どう?」「なかなかいいね、とてもいい題だね」彼はほとんど考えもしないで、とってつけたように…

『別れ』フアン・カルロス・オネッティ

別れ (フィクションのエル・ドラード) 作者:フアン・カルロス オネッティ 発売日: 2013/10/01 メディア: 単行本 併録されている2つの短篇はすでに読んで記事を書いたが、表題作の中編「別れ」をようやく読み終えた。あ〜長かった。 ・別れ ("Los adioses", …

「天地創造」ドン・デリーロ(『天使エスメラルダ』収録)

天使エスメラルダ: 9つの物語 作者:ドン デリーロ 発売日: 2013/05/31 メディア: 単行本 今読んでいる数冊の小説をバッグに入れ忘れたので、目の前にあった『天使エスメラルダ:9つの物語』を手に取り、冒頭の1編を読んだ。 ・天地創造 ("Creation" 1979年…

「生命線」「最後の恋」「女王人形」「チャック・モール」カルロス・フエンテス

『フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇』の他四篇を読んだ。 生命線 銃殺されるのを待つだけだった革命軍兵士の4人が監獄を脱出し、再び捕らえられ死ぬ リーダー格で主人公のヘルバシオ・ポーラの感情の動きが目まぐるしく身につまされる。 こういうザ・…

「アウラ」カルロス・フエンテス

hiddenstairs.hatenablog.com 前記事に続き、岩波文庫のフエンテス短篇集を読んだ。 ・アウラ 「君」……二人称小説だ!しかも『子供の領分』のような現在形 バス停でバスが停車せずスピード落とすだけってマジかよ。メキシコ…というか海外ではそれが一般的な…

「純な魂」カルロス・フエンテス

ラテンアメリカ文学好きと言っておきながら未だほとんど読んだことがないフエンテス。この作家の名を初めてちゃんと認識したのは、セサル・アイラ『文学会議』──主人公のマッドサイエンティストが尊敬する作家フエンテスのクローンを大量生産して世界征服を…

『ズボンをはいた雲』マヤコフスキー

「自分では到底理解できないようなぶっ飛んだ小説に出会いたくて海外文学を読んでいる」と公言するにも関わらず、詩を一切読まないのはヤバいんじゃないか?という焦りがしばらく前からあった。しかし日本の現代詩にはあまり食指が動かず、薦められた小笠原…

『笑いと忘却の書』ミラン・クンデラ

クンデラ全小説読了。『笑いと忘却の書』『存在の耐えられない軽さ』『不滅』の中期三作の勢いが圧倒的だった。後期では『無知』が良かったかも。 — ロバ (@donkeys__ears) 2021年4月13日 『笑いと忘却の書』を読もうと思ったきっかけはこのツイート 中期三…

『ヴァインランド』(4)トマス・ピンチョン

前回↓のつづき hiddenstairs.hatenablog.com 6, 7, 8章まで読んだ。 6章(pp.102-134) プレーリーの母フレネシの現在の話と、彼女の両親サーシャ/ハブ、それから母方の祖母ユーラ/祖父ジェスの代まで遡る人生記 フレネシがいかに密告まみれの政治的環境(共…

「兎」「アカシア騎士団」金井美恵子

愛の生活・森のメリュジーヌ (講談社文芸文庫) 作者:金井 美恵子 発売日: 1997/08/08 メディア: 文庫 東京でフォロワーさんとオフ会したときに頂いた本 金井美恵子は自分からは読まないだろうな〜と思っていたのでありがてぇ 表題作ではなく、特にオススメさ…

「くじ」「背教者」シャーリイ・ジャクスン

akosmismus.hatenadiary.com 色んなところで「くじ」の名を聞いていたが、信頼している読書家が「完璧な短篇小説」と書いていたのが決め手となり、早川書房の異色作家短篇集シリーズの「くじ」を借りてきた。が、こちらのサイトで手軽に読めたらしい。 異色…

『ヴァインランド』(3)トマス・ピンチョン

hiddenstairs.hatenablog.com 続き 4章・5章まで(約100ページまで)読んだ。 https://vineland.pynchonwiki.com/wiki/index.php?title=Chapter_4 ヴァインランドwiki 4章 pp.54-83 なんとか借りられたのが「リトル・ハスラー」の異名をもつダットサンの小型…

『ヴァインランド』(2)トマス・ピンチョン

hiddenstairs.hatenablog.com ↑の続き 2章と3章を読んだ。(p.53まで) https://vineland.pynchonwiki.com/wiki/index.php?title=Chapter_2 ヴァインランドwiki, chapter 2 2章 毎年の恒例行事としてメディアに報じられてるのか…思ってたよりずっと大規模な…

『スワロウテイル人工少女販売処』(2)籘真千歳

hiddenstairs.hatenablog.com ↑の続き 第1部第2章(p.90)まで読んだ。 自治区の大半の人間と人工妖精は、世界一の福祉に守られ、時間を持て余している。(中略)憂いのない都市。安寧と平穏と平等と充実の詰まった二十八万区民だけの玉手箱。 p.71 お手本の…

『スワロウテイル人工少女販売処』(1)籘真千歳

スワロウテイル人工少女販売処 作者:籘真千歳 発売日: 2013/09/30 メディア: Kindle版 akosmismus.hatenadiary.com SF研の机に平積みされていたときから気になってはいたが、読もうと決心するきっかけは、みかんさんのおすすめのSF小説リスト↑に載っていたか…

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫) 作者:桜庭 一樹 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 kageboushi99m2.hatenablog.com 早速、soudaiさんの長篇ベスト100に入っていて未読だった桜庭一樹『砂糖菓子の弾…

『ヴァインランド』(1)トマス・ピンチョン

『V.』でピンチョンデビューしてから、『競売ナンバー49の叫び』, 『重力の虹』, 『スローラーナー』と出版順に読んできてるので、とうぜん次は本書。 しかし来月にはいよいよ『ブリーディング・エッジ』が出版されるらしいし、それまでに読み終えられる気が…

時期別・ベスト長編小説best100!

kageboushi99m2.hatenablog.com 私がもっとも愛読しているブログである「タイドプールにとり残されて」に、私がもっとも切望していた記事が投稿された。 海外文学好きとして(私に)知られるsoudaiさんの長篇ベスト100だ。はてなスターを連打してから即ブック…

「黄金の少年、エメラルドの少女」イーユン・リー

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫) 作者:イーユン リー 発売日: 2016/02/08 メディア: 文庫 本書の最後を飾っている表題作「黄金の少年、エメラルドの少女」を読んだ。 20ページ強の短編 彼は母親だけの手で育てられた。同じように、彼女は父親だけの…

「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」柴田勝家

雲南省スー族におけるVR技術の使用例 (早川書房) 作者:柴田 勝家 発売日: 2018/07/20 メディア: Kindle版 サークルの課題図書なので読んだ。20ページほどの短編 (上記Kindleではなく初出のSFマガジンで読んだ) 柴田勝家さんの著作を読むのは初 特段にこ…

「回転する動物の静止点」千葉集

proxia.hateblo.jp 千葉集さんのブログ「名馬であれば馬のうち」は前から読者登録して読んでいたのだが、先日投稿されたこちら↑の記事が特にめちゃ良くて、そういえばこの人SF短編の賞とってるらしいなー読んでみよっかな〜〜 という明瞭な動線で、その短編…

「彼みたいな男」「獄」イーユン・リー

イーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』のうち「彼みたいな男」「獄」の2編を読んだ。 ・彼みたいな男 娘が節足動物になったかのように蠍を描いてもよかったのだが、そういうことをすると彼の道徳基準を下回ってしまう。言葉であれどんな形であれ女…

「優しさ」イーユン・リー

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫) 作者:イーユン リー 発売日: 2016/02/08 メディア: 文庫 河出文庫から出ているイーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』の最初の短編「優しさ」を読んだ。 本作を読むきっかけは、以下のツイートだ。 イーユ…

『推し、燃ゆ』宇佐見りん

読む前から薄々わかってはいたが、案の定じぶんがいちばん苦手なタイプの小説だった。所謂「現代の若者の感性を生々しく描く」系で、表現したいことが(全体を通しても、場面場面でも)わかり易く、それをお行儀よくこなせている優等生純文学。時代の要請で…