「くじ」「背教者」シャーリイ・ジャクスン

akosmismus.hatenadiary.com 色んなところで「くじ」の名を聞いていたが、信頼している読書家が「完璧な短篇小説」と書いていたのが決め手となり、早川書房の異色作家短篇集シリーズの「くじ」を借りてきた。が、こちらのサイトで手軽に読めたらしい。 異色…

『ヴァインランド』(3)トマス・ピンチョン

hiddenstairs.hatenablog.com 続き 4章・5章まで(約100ページまで)読んだ。 https://vineland.pynchonwiki.com/wiki/index.php?title=Chapter_4 ヴァインランドwiki 4章 pp.54-83 なんとか借りられたのが「リトル・ハスラー」の異名をもつダットサンの小型…

『ヴァインランド』(2)トマス・ピンチョン

hiddenstairs.hatenablog.com ↑の続き 2章と3章を読んだ。(p.53まで) https://vineland.pynchonwiki.com/wiki/index.php?title=Chapter_2 ヴァインランドwiki, chapter 2 2章 毎年の恒例行事としてメディアに報じられてるのか…思ってたよりずっと大規模な…

『スワロウテイル人工少女販売処』(2)籘真千歳

hiddenstairs.hatenablog.com ↑の続き 第1部第2章(p.90)まで読んだ。 自治区の大半の人間と人工妖精は、世界一の福祉に守られ、時間を持て余している。(中略)憂いのない都市。安寧と平穏と平等と充実の詰まった二十八万区民だけの玉手箱。 p.71 お手本の…

『スワロウテイル人工少女販売処』(1)籘真千歳

スワロウテイル人工少女販売処 作者:籘真千歳 発売日: 2013/09/30 メディア: Kindle版 akosmismus.hatenadiary.com SF研の机に平積みされていたときから気になってはいたが、読もうと決心するきっかけは、みかんさんのおすすめのSF小説リスト↑に載っていたか…

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫) 作者:桜庭 一樹 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 kageboushi99m2.hatenablog.com 早速、soudaiさんの長篇ベスト100に入っていて未読だった桜庭一樹『砂糖菓子の弾…

『ヴァインランド』(1)トマス・ピンチョン

『V.』でピンチョンデビューしてから、『競売ナンバー49の叫び』, 『重力の虹』, 『スローラーナー』と出版順に読んできてるので、とうぜん次は本書。 しかし来月にはいよいよ『ブリーディング・エッジ』が出版されるらしいし、それまでに読み終えられる気が…

時期別・ベスト長編小説best100!

kageboushi99m2.hatenablog.com 私がもっとも愛読しているブログである「タイドプールにとり残されて」に、私がもっとも切望していた記事が投稿された。 海外文学好きとして(私に)知られるsoudaiさんの長篇ベスト100だ。はてなスターを連打してから即ブック…

「黄金の少年、エメラルドの少女」イーユン・リー

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫) 作者:イーユン リー 発売日: 2016/02/08 メディア: 文庫 本書の最後を飾っている表題作「黄金の少年、エメラルドの少女」を読んだ。 20ページ強の短編 彼は母親だけの手で育てられた。同じように、彼女は父親だけの…

「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」柴田勝家

雲南省スー族におけるVR技術の使用例 (早川書房) 作者:柴田 勝家 発売日: 2018/07/20 メディア: Kindle版 サークルの課題図書なので読んだ。20ページほどの短編 (上記Kindleではなく初出のSFマガジンで読んだ) 柴田勝家さんの著作を読むのは初 特段にこ…

「回転する動物の静止点」千葉集

proxia.hateblo.jp 千葉集さんのブログ「名馬であれば馬のうち」は前から読者登録して読んでいたのだが、先日投稿されたこちら↑の記事が特にめちゃ良くて、そういえばこの人SF短編の賞とってるらしいなー読んでみよっかな〜〜 という明瞭な動線で、その短編…

「彼みたいな男」「獄」イーユン・リー

イーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』のうち「彼みたいな男」「獄」の2編を読んだ。 ・彼みたいな男 娘が節足動物になったかのように蠍を描いてもよかったのだが、そういうことをすると彼の道徳基準を下回ってしまう。言葉であれどんな形であれ女…

「優しさ」イーユン・リー

黄金の少年、エメラルドの少女 (河出文庫) 作者:イーユン リー 発売日: 2016/02/08 メディア: 文庫 河出文庫から出ているイーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』の最初の短編「優しさ」を読んだ。 本作を読むきっかけは、以下のツイートだ。 イーユ…

『推し、燃ゆ』宇佐見りん

読む前から薄々わかってはいたが、案の定じぶんがいちばん苦手なタイプの小説だった。所謂「現代の若者の感性を生々しく描く」系で、表現したいことが(全体を通しても、場面場面でも)わかり易く、それをお行儀よくこなせている優等生純文学。時代の要請で…

『コレラの時代の愛』(1)ガブリエル・ガルシア=マルケス

コレラの時代の愛 作者:ガブリエル・ガルシア=マルケス 発売日: 2006/10/28 メディア: 単行本 なんか気分で借りて読み始めた。もともと読みたいとは思っていた。 大滝瓶太さんの好きな海外作家15人noteの1位でこれが紹介されてるのを久しぶりに読み返したの…

『旅する練習』乗代雄介

Twitterで「生き方の問題」を激推ししている人を見かけて文芸誌で読んでから、私のなかで乗代雄介はそこそこ興味のある作家になり、芥川賞候補になった次作「最高の任務」も読んだ。 興味があると言っても、2作ともめちゃくちゃ好きなわけではなく、好きな点…

『やし酒飲み』エイモス・チュツオーラ

尊敬する読書家の知り合いが「やっぱり『やし酒飲み』みたいな小説の語りが最強だよ」的なことを言っているのを聞き、翌日図書館で単行本版を手に取り、すぐにこれはとんでもない作品だと確信したため生協で岩波文庫版を買った。 わたしは、十になった子供の…

「蟹」庄野潤三

2/26 庄野潤三「蟹」を読んだ。 海辺の宿にバカンスに行く5人家族の話。 語りの視点?がふわふわしている。対象に目を向ける(描写する)順番の独特さというか。「〜したり、〜したり」といった反復・並列の言い回しが心なしが多い気がする。蟹の「往きつ戻…

「ナチュラル・ウーマン」松浦理英子

河出文庫の松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』に入っている3つの作品のうち、表題作だけを読んだ。 1なんだか少女マンガか、女性作家のサブカル青年漫画でありそうな雰囲気の話だなぁとしか思わない。男の人に心を寄せられない私が出会った「運命の人」……!…

『最愛の子ども』松浦理英子

知り合いから「松浦理英子の『ナチュラル・ウーマン』は大傑作だから是非とも読んでほしい」と薦められ、そのときちょうど出張をしていたので地域の本屋を探して入店した。それほど大きな書店ではなく、敷地面積の半分はCDやDVDに占められているような店だっ…

「プールサイド小景」庄野潤三

庄野潤三『プールサイド小景・静物』新潮文庫 プールサイド小景・静物 (1965年) (新潮文庫) 作者:庄野 潤三 メディア: 文庫 こないだ大阪梅田から徒歩圏内の詩歌中心の古書店「葉ね文庫」の100円ラックで大量に買ったうちの1冊。「プールサイド小景」って名…

「失われた花嫁」フアン・カルロス・オネッティ(『別れ』収録)

hiddenstairs.hatenablog.com 前記事に引き続き、『別れ』に収録されたもう1つの短編「失われた花嫁」(1968)を読んだ。 「この恐ろしい地獄」で、そのレトリカルで難解な文章に驚き感動したが、この短編では文章の凄さというより「語り」が凄いと言ったほ…

「この恐ろしい地獄」フアン・カルロス・オネッティ(『別れ』収録)

水声社の〈フィクションのエルドラード〉から寺尾隆吉訳で出版されている、オネッティの『別れ』を最寄りの書店で衝動的に買った。ウルグアイを代表する作家のひとりらしい。初めて読む。 まずは、100ページ弱の表題作ではなく、併録されている20ページほど…

『ボディ・アーティスト』ドン・デリーロ

上岡伸雄 訳(ちくま文庫 )で読んだ。 初デリーロはこれと決めて昨年の11月に読み始めたが序盤で放置しており、ちょうど本作でオンライン読書会が開かれるということで数時間前に読み終えた。 付箋を貼った文を引用しながら読んでいる最中に思ったメモを記…

「愛」「別れ」ウラジーミル・ソローキン

初ソローキン ○愛 1年くらい前、沖縄時代に書庫で冒頭のこれだけ読んで「脳みそをハンマーで殴られたような」(クリシェ!)衝撃を受けたのを覚えている。急転直下のオチ、「何かの機械に突然人間がすり潰されて肉塊になる」くらいしか覚えてなくて、今回わ…

「ガイジン」「こんなところで死にたくない」ラッタウット・ラープチャルーンサップ

タイの作家ラープチャルーンサップの短編集『観光』から、気分で2編選んで読んだ。 ○ガイジン 典型的なボーイミーツガールの骨格に、タイの観光小島の風景や混血児の葛藤が織り込まれている良作。 シンプルに良い。この短編集ってもしかしたら初めて読む海外…

『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン

野崎訳:光文社古典新訳文庫で読んだ。 世界観が面白い! シュルレアリスム・不条理文学なんだけど、不気味というよりむしろ小気味良い快活さの香る数々の小ネタ。 物語の大筋はド王道の恋愛悲劇で、細部のエピソードや描写に奇想が盛り込まれている。 50pま…

『恐怖の兜』ヴィクトル・ペレーヴィン

すぐに読める長篇を求めていて、全編チャット形式で読みやすそうだから手にとった。読みやすかった。 実験的なものが好きなので、チャット形式の小説に興味があったという理由もある。 端的に、いい意味でしょうもなくくだらない話だった。 間違っても傑作な…

『世界泥棒』(1)桜井晴也

31ページまで(239ページ中) web上の個人ブログで読める『愛について僕たちが知らないすべてのこと』と今のところほぼ同じ感じ。文体とか雰囲気とか なんだろう、ジュブナイル100%というか、「エモい」の権化というか、現代日本の若者(学生)の世界感覚と…

「症候群」大滝瓶太

『徳島文學 第三号』収録 大滝さんの書いた小説(短編しか読んだことがない)で、数理要素があからさまに出てこない、いわゆるふつうの"純文学"を読んだのはこれが初めてだと思う。読み味としては、noteやはてなブログで書いているエッセイ等の記事に近い。 …