『ヴァインランド』(2)トマス・ピンチョン

 

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2章と3章を読んだ。(p.53まで)

 

https://vineland.pynchonwiki.com/wiki/index.php?title=Chapter_2

ヴァインランドwiki, chapter 2

 

2章


毎年の恒例行事としてメディアに報じられてるのか…思ってたよりずっと大規模な取り組みだった。
めちゃくちゃふざけてんな〜競売ナンバーの序盤のモーテルでのカオスなくだりとか、早めにキャッチーな展開を入れてるのかな

 

「おい、オレは金がないって言ってるだけだぞ。誰だ、このごろおまえにヘンなこと吹き込んでるなぁ」
長くしなやかな首と脊椎の上で、少女の頭が微妙に回り傾いた。父親と話すための適切な角度に微調整したふうである。「そうね。イのつく人が、ひとことふたこと言ってたみたい」 p.27

ここの地の文いいなぁ

 

 

「そいでさ、思うんだけど、イザヤと組んでビジネスする気ない?」ゾイドの耳に聞こえた限り、たしかにプレーリーはそう言った。「彼ならノルわよ。パパは心を開きさえすればいいの」
どういう意味だか理解できないゾイドは軽口で受け流した。「心かい、心だけなら開いてやってもいいね。アイツがヘンなところをオレに向けて開かなけりゃね」──と言うが早いか、顔面めがけてスポーツシューズが飛んできた。中に足が入っていなかったのはラッキーで、首をすくめるとそれは耳をかすめて飛んでいった。 p.29


プレーリーの彼氏?イザヤ。モヒカン。地元のヘヴィメタバンドのメンバー。親がヒッピー
「ヴァイオレンス・センター」なるふざけた小型テーマパークの設立を目指しゾイドに連帯保証人を頼んでくる

 

登場するなりイザヤがやってみせたのは、ヴェトナム兵士の挨拶と彼が信じる、複雑な手のひらパチンの挨拶である。この少年はなぜかいつも、ゾイドをヴェトナムと結びつける。このあたりに住みついた帰還兵や監獄の囚人たちから仕入れたネタの部分はゾイドにも伝わったが、私的な解釈になっているところはついていけない。演技中、イザヤはずっとジミ・ヘンドリクスの「紫のけむり」をハミングしていた。「ヘーイ、ミスタァ・ホイーラー、ハウ・ユ・ドューイン?」 p.30

この辺のカオス感たまらん

 


3章

ゾイドとヘクタの馴れ初め回想
1967年、ゾイドがキーボードを務めるザ・コルヴェアーズの仲間たち数人で南カリフォルニアのゴルディータ・ビーチのボロ家に住んでいた頃、ドラッグ捜査のためヘクタが訪ねてきた。

 

現在時制
ボウリング場〈ヴァインランド・レーン〉併設の食堂にゾイドは呼び出される。ヘクタの奢りが条件で。

ゾイドの元妻フレネシはヒッピー過激派で体制の監視下に置かれている?
彼女のデータが何者かに消されて行方がわからない……こっちへ向ってる?

 

シックスティーズ=60年代世代=ヒッピー世代?

 

人生にくたびれた中年のオッサン2人……お互いに若かりし頃の威勢やプライドはもう無く、妥協と惰性で生きている。
追いかけ追われる関係であっても、置かれた状況や心境はとても似通っており、お互いに共感できることが多そう。
相手を非難しても、それが結局自分に跳ね返ってくることを知っているから自嘲気味になってしまう。

 

これまで何人もがヘクタを狙って時間を無駄にしたらしいが、彼の暗殺にもっとも適した悪漢は他ならぬヘクタ自身であっただろう。いつどこでどんなやり方でやったらいいのか、ベストの選択肢を知っているのは彼だったし、動機にしても誰より彼自身が一番持ち合わせていたわけだ。 p.47

哀しい……

 

ヘクタはゾイドと元妻のよりを戻そうとしてる?
何にしろ、元妻捜索の件でゾイドを特別に雇うっぽい。普段どおりの生活をするだけで給料がもらえる。

 

若い娘が片方の親と暮らしていて、離婚したもう1人の親は行方知れず……っての、フランゼン『ピュリティ』っぽい。
というか王道の設定よな。親探しの旅
しかし本作では父親たるゾイドが主人公

 

 

勘定書を持ってウェイトレスが近づいてきた。条件反射で席を飛び出たヘクタを見て、慌ててゾイドが一緒に飛び出てゴッツンコ。びっくりした彼女が後ずさりした拍子に落ちたチェックは、それに飛び掛かった三人の間を巡り巡って回転式の調味料トレイにヒラヒラ舞い降り、端っこが半透明化したフルフルのマヨネーズの丘に半分沈み込んだ。 p.51

お得意のコミカルでスピード感あふれる描写

 

先日、ピンチョンの文体はハードボイルド探偵小説のそれだと言ったが訂正する。
ピンチョンの三人称の語りは変幻自在で破天荒なんだけど、例えるなら講談とか、芝居の口上、あるいは魚屋のたたき売りみたいな弁舌に近いと思う。「寄ってらっしゃい見てらっしゃい、今日も面白い素っ頓狂な大冒険譚を仕入れてるよ〜」的な。
リズムが小気味よく、スラスラ読める部分があることはおそらく翻訳の佐藤さんも意識しているだろう。


え、ヘクタもまた精神的に問題があり、組織から追われてるの!? TV中毒の伏線だったとは……
ピンチョンにオタクを主題にした小説とか書いてもらいたいな。パラノイアとも相性良いし。

 

 

今のところかなり読みやすい。視点人物もゾイドに一貫してるし、コミカルだし、時系列も舞台も超絶シャッフルされてないし……

なんかヴァインランドでは文章のなかで流れるように過去と現在を行き来すると聞いているけど、それはこれからなのかな。ワクワク

 

 

続き

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ヴァインランド (トマス・ピンチョン全小説)
 

 

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