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庄野潤三「蟹」を読んだ。
海辺の宿にバカンスに行く5人家族の話。
語りの視点?がふわふわしている。対象に目を向ける(描写する)順番の独特さというか。
「〜したり、〜したり」といった反復・並列の言い回しが心なしが多い気がする。蟹の「往きつ戻りつ」と掛かってる?まさかね……
やっぱこの人の文体って全体的に静かというか、描写している対象から語り手が距離をとってどこか他人事として語っている感じがする。だから静かというか冷めているというか……。三人称は一般的にそうなりがちではあるが、それを踏まえてもちょっと独特の雰囲気がある。いやどうなんだろう、こういう小説に自分が親しんでいないだけで、日本近代文学とかにはありふれてるのかな。
あ、海外の話じゃないんだ。てっきり登場人物は外国人で舞台も海外かと。セザンヌとかルノワールは単なる宿の部屋名ね。
プライバシーの観念はあるけどプライバシーを保持する設備環境がこの時代の宿には整ってないの面白いな。
なんか3つの部屋が繋がって修学旅行の夜みたいになってる。
・・・とか言ってたら終わった。最後が意味深〜〜〜そうだよな〜窓越しに見えた外国人の男ってのがどういう意図で差し込まれたのか考察のしがいがあると思ってたらまさに締めで使われた。
それがなければ普通に海辺のバカンスの平和で生き生きとした情景をありのままに綴ったスケッチという感じで、何も意味をもってない素朴さが良いなと思っていたのに。