『はつ恋』イワン・ツルゲーネフ(1860)

 

新潮文庫神西清

 

 


2025/3/18〜20
3日間


3/18(火)

『ボヴァリー夫人』から、19世紀中盤ごろの近代小説を読む流れになっている。

 

↑ここに挙げられており、本棚を漁ったら出てきたので。100ページという薄さも嬉しい。

 

枠物語。三人称叙述で、3人の中年男が深夜にお互いの初恋について語り合う。40歳ほどの独身ヴラジーミル・ペトローヴィチが、二週間かけて「手帳」に書いた回想録を読み上げる形式で、本編(一人称叙述)に入っていく。
書かれたものであるという小説のエクリチュールへの意識。

 

1833年夏。モスクワの別荘に滞在する16歳だった頃のヴラジーミル。文章がめっちゃロマン主義だ。青春の若々しさ、自己陶酔、多感さ、大仰さがすごい。

 

いま思い返してみると、女の姿とか、女の愛の面影とかいうものは、ほとんど一度も、はっきりした形をとって心に浮かんだことはなかった。しかも、わたしの考えることのすべて、わたしの感じることのすべてには、何かしら新しいもの、言うに言われぬ甘美なもの、いわば女性的なもの……に対する、半ば無意識な、はじらいがちの予感が、潜んでいたのだった。 pp.9-10

初恋前夜

 

これがほんとの「独身貴族」か……

 

3/19(水) p.11〜
童貞ブンガクすぎ  一目惚れにも程がある

このミソジニーな用語を使いたくないんだけど、ヘテロ男の理想の「魔性の女」すぎる。これを回想形式で、中年男たちの交友の場で披露しているところまで含めて実にホモソーシャルだ。


「ね、いいこと」と、彼女は切って返した。──「あなたはまだ、あたしという女を御存知ないけれど、あたし、とっても妙な女なのよ。あたしはね、いつも本当のことだけ言ってもらいたいの。さっき伺うと、あなたは十六だそうですけれど、あたしは二十一なんですものね。あたしの方が年上でしょう、だからあなたは、あたしにいつも本当のことばかり言わなけりゃいけないのよ……そして、あたしの言うことをきかなくてはね」と、彼女は言い出して、──「さ、あたしの顔をまっすぐ見てちょうだい。なぜ見ないの?」

うおおお
しかも5歳も歳上かよ!! 高2男子と成人した女子大学生と考えれば、おねショタ?すぎる

ジノーチカ、通称ジナイーダ

わたしは、水の中の魚のようにいい気持で、一生この部屋から出て行きたくない、この場から動きたくないと思った。 p.24

わたしは何とも答えずに、自分の部屋へ引っ込んだ。すると突然ひどく悲しくなった。……わたしは泣くまいと懸命になった。……あの軽騎兵がねたましかったのである。 p.28

歳上の兵隊ライバル男まで出てきた。つくづく古典だ
設定や展開がヘテロ男性向けオタクコンテンツすぎて笑ってしまう

当時のロシア人(の貴族、上流階級?)にとってフランスやフランス語がいかなる存在だったのか。

 


3/20(木祝) p.39〜
なんかヤリサーの姫みたいなことしてる……

わたしは父を愛し、父に見とれて、これこそ男性というものの典型だと思っていた。だから、実際の話が、私はもっと強く強く父になついたはずなのだが、ただ父の手が私を押しのけているような感じが、しょっちゅうあって、それが邪魔になったのだ! p.46

息子の、父への思慕の情。2年後の『父と子』に繋がるテーマ?
息子の初恋体験を詳しく聞いて共有せんとする父。男同士の絆。

p.51 「人間のぶつけ合い」!! さすがに悪趣味すぎんか。ドSなジナイーダ。

「あたしがあの人を愛してると、あなた思っているのじゃない? 違うわ。わたし、こっちで上から見下ろさなくちゃならないような人は、好きになれないの。わたしの欲しいのは、向うでこっちを征服してくれるような人。……でもね、そんな人にぶつかりっこはないわ、ありがたいことにね! わたし、誰の手にもひっかかりはしないわ、イイーだ」 p.55

 


ジナイーダにとっての初恋でもあるのか……
これで両想いだったらアツいが。

「おやおや」と、ジナイーダは口真似をして、「生きることが、そんなに面白いかしら? ぐるりを見回して御覧なさい。 ・・・・・・どう、 よくって? それともあなたは、わたしがそれさえわからない、感の鈍い女だと思ってらっしゃるの? わたしは、氷水を飲むといい気持なの。だのにあなたはこんな人生が、束のまの満足のために危険を冒してはならないほど大事なものだと、真顔でわたしに説教なさるおつもりね。 ―わたし、もう幸福なんかどうでもいいの」
 「つまり、その」と、ルーシンが皮肉った。
 「気まぐれと自分勝手。......この二語にあなたは尽きるんですな。あなたという人は、全部この二語のうちにありますよ」
 ジナイーダは、神経質に笑い出した。 p.65

恋に悩んで自暴自棄になってるジナイーダ良い。台詞キレッキレ

 

p.74 うおおおおおお  これが"萌え"か……
p.81 ヴォルデマール、あまりにも若い。これが若さか…… 青臭さに目がどうにかなりそう
p.82 まさか、父なのか……? ジナイーダが恋する相手というのは。(ごんぎつね構文)
でもそうだとすると全ての辻褄が合うんだよな〜〜うわ〜〜なるほど〜〜〜 そういう話かぁ〜〜!

情景描写のなかに動物や虫の動きを入れがち

 

「一旦もう、作り話になったからには」と、彼女は言った。──「こんどはみんな、何か話をすることにしましょう。自分で考えた話でなくちゃ駄目よ」 p.89

ジナイーダ詩的表現力もかなりあって好き

 


すごくミステリ・サスペンスめいてきた。愛しの彼女と深夜に密会している男は誰だ。なぜ近頃母は機嫌が悪く、ジナイーダを毛嫌いしているのか。「わたし」に対するジナイーダの振る舞いの真意とは。

屋敷の庭の噴水という舞台設定も終盤にかけてますますきいてきている。

 

古典的な寝取られというか、BSSだよなぁ…… 父殺しに失敗する少年のイニシエーションの物語。親子で取り合う三角関係ということで、『まぼろし工場』の父息子ver.だ。

姦通を密告したのマレーフスキイやろうなぁ……

p.113
すごく…… 感傷マゾです。。 垂涎もの

p.115
身を破滅させるジナイーダのそれと比べて、ヴォルデマールのそれは「初恋」ですらなかったと突きつけられる。初恋の終わりではなく、初恋ですらなかった幼い日の何かの終わり。少年時代の終わり。

わたしのこと、悪く思わないでね。時々あなたを、いじめたけれど、でもわたし、あなたの思ってらっしゃるほどの女でもないのよ p.116

 

その長い長い別れのキスが、誰を心あてにしたものか、神ならぬ身の知るよしもなかったけれど、わたしはむさぼるように、その甘さを味わった。 p.117

ヴォルデマール完堕ちしとるやんけ えっちなお姉さんに性癖破壊されちゃった……

 

とはいえ、父その人に対しては、わたしは少しも悪い感情を抱いていなかった。むしろ逆に、父はわたしの目に、一層大きな人物として映ずるふしもあったのである。……この矛盾は、心理学者どもが、なんとでも勝手に解釈するがいいのだ。 p.118

なるほどなあ そうなるのかぁ

 

まだ続くんだ。

p.123 えぇ……どゆこと?
おい! そこで逃げ出しちゃ駄目だろ!!

あっさり死んだ〜w

 

女の愛を恐れよ。かの幸を、かの毒を恐れよ p.127

本当に恐いのはあんたの父権的な「愛」=暴力だろ!! な〜に相手=女に「毒」を押し付けてんだよ!! ミソジニー男=強権的な〈父〉として最期まで一貫してる

 

まだまだ続くんかい

えぇ……こっちもかよ……

p.130 ここの青春論、名文だなぁ

最後は名も知れぬ老婆の臨終シーンから、死を運命づけられた人間一般への祈りに至って終わった。

 

終盤でとりあえず全員死なせて荘厳な哀愁を演出するのはなんだかなぁ まぁ父が急死するのはともかく、もしジナイーダだけ死んでたらフェミニズム的に厳しかった。

 

ツルゲーネフこんな感じなのか〜 めっちゃ「古典」だった。良くも悪くも。青春小説の一大古典と言っていいだろう。三角関係と失恋要素があって好みでした。父息子関係はなんとも言えないが。。

『父と子』前哨戦といったところか。知らんけど

枠物語の外のほうに戻らずに終わった。

 

これは『父と子』読みたくなっちゃうな~~

 

 

 

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