『愛の妖精』ジョルジュ・サンド(1849)
中公文庫、篠沢秀夫訳
本作を読もうと思ったきっかけはこちらの記事↓
ラテンアメリカ文学をいろいろ読んでいる方が、それらを凌駕するイチオシとして挙げていた。
◎livedoorブログの共通テーマ「オススメの本はありますか?」
「愛の妖精」ジョルジュ・サンド
うん。これガチだから。一日中幸せな気分になれる。去年の冬、東中野のドトールで読んだんだけど、身を切るような寒さの中をスキップして帰ったもん。僕の中の1位。「カラ兄」も「戦争と平和」も「百年の孤独」も、これに比べたらうんこみたいなもん。マジで。たぶん200ページぐらいしかなかったと思うからぜひ読んで欲しい。これを読んで以来、本屋でサンドの本を見つけるたびに買ってる。もちろん読んでないけど
この記事を読んでから、自分も同じように『愛の妖精』を古本屋で見かけるたびに買うようになってしまった。(そして何年も積んでいた)
2025/3/12〜17
計6日間
『ボヴァリー夫人』を読んだ ↑ ので、フローベールが敬愛していたらしい同時代の作家として、長年積んでいた本作を満を持して読む。
3/12(水)
岩波文庫版も買っていたが、さすがにあちらは訳文も組版も古すぎるので、篠沢訳で読むことにした。
三人称叙述 こうして同時代の他の小説を読んでみると、確かにボヴァリー夫人の自由間接話法を発明した偉大さ、あの語りの当時としての異様さがじわじわ分かってくるかも。
双子ものか〜〜! シルヴィネとランドリ。互いに想いあってていいですねえ 文章表現もなかなかに
ランドリ兄想いのいい子すぎる。。
母曰くいかにも「男の子」の弟ランドリと、「女の子のよう」なシルヴィネ。『ふたごチャレンジ』?
ちゃくちゃシニカルな『ボヴァリー夫人』を読んだばかりなので、それに比べて本書は圧倒的にピュアで善良さに満ち満ちているギャップにやられる。。 語り口などから童話っぽさもある?
3/13(木) p.31〜
シルヴィネが弟に依存し過ぎててちょっとこわい
ここからヒロイン出てきて三角関係になるのか? ヘテロ百合ならぬヘテロBL三角関係じゃん。ホモ/ヘテロが絡み合うトライアングル
ヤンデレメンヘラブラコン兄…… 弟ランドリが真っ当に育っているのが余計にコントラストを成してかなしいなあ
わたしとしてはそんな病気はどれもほんとうに信用したこともないし、 p.49
「わたし」!? 語り手がいきなり出てきてビビる
《ちっちゃなファデット》登場!! 地域の「魔法使い」のようなおばあさんの孫娘。この頃からそういう典型的なヒロイン属性あったんだ
3/14(金) p.51
鬼火であり妖精であるいたずら少女フランソワーズ
こおろぎとばったのきょうだい…… 地獄兄弟?
ランドリ14歳とファデット13歳でひとつ違いかぁ
「あんたなんかのためにどうしていい子にならなきゃいけないの?」 p.57
クソガキで最高
自暴自棄で行方がわからなくなった双子の兄を助けるために、「悪魔」のような少女と約束を交わす弟── 三角関係としてこれ以上ない始まり方じゃないか? ヒロインに貸しを作ることで関係が始まる。
ランドリほんと賢いな〜 兄がすねて逃げないように上手く自然に声を掛ける
作品の光属性っぷりがすごい。
3/15(土) p.64〜
ファデットきょうだいファデ婆さんから虐待されてて可哀想😢
児童文学っぽさはあるな。というか、少年少女が主人公のおはなしなら比較的なんでも好きなのかもしれない。
ランドリを避け、シルヴィネをからかうファデットの真意とは……
え、ランドリに両想いの歳上お姉さん(同居中)が出来たんだけど!
家出したシルヴィネの次は、鬼火にひるむランドリを救うファデット。うおおお 男子主人公の手を取って力強く引っ張っていくヒロイン良すぎる……
この鬼火ってファンタジー要素じゃなくてほんとに自然現象なのか?
p85 うわああああ ツンが烈しいぶん、デレの破壊力もすごすぎる…… こんなん反則やろ!! ファデットすでにめっちゃランドリのこと好きじゃん!!! キュン死してまう
「そうだ、そうだ、そりゃ同じことだよ。四人で踊ることにしようよ」とシルヴィネは、なにも気づかずに言った。 p.88
シルヴィネwwww 鈍感すぎる
ここで双子であることを活かしてくるのか〜
すげぇ、自分の好きな人の恋を見事に破局に導いてるじゃんファデット
p.97 ランドリかっこよすぎ 少年漫画的?少女漫画的?な、いじめられている少女を正義に燃えた少年が助ける胸アツ王道展開
「いいの。きょうはもうたくさん踊ったわ。あとはもうすんだことにするわよ」
「いや、いや、もっと踊らなくちゃいけない」勇気と誇りで火のようになったランドリは言った。「ぼくと踊るときみがばかにされるなんてことを言わせないようにしてやるんだ」 p.98
「きみと踊るとぼくがばかにされるなんてことを言わせないように」じゃあないのが良い。じっさいはそっちのほうが正確なんだけど。
やばい、全文最高ゾーンに確変して入ってしまった。ファデットの何もかもが素晴らしく好き
「おとこおんな」と呼ばれるファデットが、自身の性格や世間からの評価に対して冷静に説明し反論する。サンドが「初期のフェミニスト」だというのも非常によく分かる。反ルッキズムに関してもかなり良いことを言っている。
ファデットのお母さんが戦地に行く軍人の男たちに"酒保女"として付いていったというバックグラウンドの設定も、そういうことか〜 女性が「戦争」に駆り出されること、「男性」のサポート労働に駆り出されること。アレクシエーヴィチにも連なる文脈。
「魔法使い」というか「魔女」だよなぁ。このレッテルを男権社会から押し付けられて弾圧される女たちが、それを肯定的に自称してエンパワメントしていくのは現代フェミニズムにも通ずる。
ピュアな児童文学っぽさ、少年少女の関係という面だけでも最高に自分好みなのに、さらにフェミニズムの古典という面まであって頭を抱えてしまう。
ファデットの絶対に媚びないとこが好きなんだよな。そういうキャラが……好きだ!!
ずっと、全セリフ引用したいくらい良い
すげえ教育的な物語だ。キリスト教道徳が背景にあるのか。語り手「わたし」もキリスト教信者っぽいし。
3/16(日) p.114〜
そうよ、わかってるわ、ランドリ。あなたの気持ちを当てるぐらいの魔法は使えるわよ。けさはまだわかっていなかったけど。いい? あたしは意地悪なんじゃなくて、いたずらっぽいんだってこと信じてよ。 p.115
名台詞すぎ
「それはね、ファンション、踊りのときに一度も接吻しなかったってことだよ。……きみを侮辱したんだよ。きみがそんなにやさしい娘じゃなかったら、気がついたはずだよ」
「そんなこと考えもしなかったわ」とファデットは言い、立ち上がった。自分がうそをついているのがわかったし、それをおもてに表したくなかったからだ。 p.118
うお〜〜〜!!
嫌がられても執拗に接吻を迫るランドリはちょっと怖い。若いなあ
ファデットは、これまで真っ直ぐ愛されたことがないため、いざ愛されるとどう受け取ったらいいかわからずに拒絶してしまう。王道のヒロインだ……
ところでこれ、シルヴィネも加わっての三角関係にはならないのか?? なんかこのまま正義感と仁義と高潔さ溢れるふたりが結ばれて終わりそうなんだけど。
マドロンが当て馬すぎる。
じゃあ、言うわ。それで気がすむんならね。もうずっとまえからあのひとのこと好きなんです。今までに思ったただひとりの人だし、きっとこれからも一生思い続けるわ。だけど、あたしだって分別もあり誇りもあるから愛してもらうように仕向けようとは一度も思いませんでしたわ。あのひとがどんな人か知っていますし、自分が何かもわかっています。 p.126
うわ〜〜〜 自分への好意を第三者に話しているところを盗み聞きしちゃう展開だ〜〜〜!!
ずっと前から、最初にランドリを助ける前から好きだったんだなぁ……良い……… ランドリがいかに恵まれているのかをさんざん言ってたのは、自分との不相応さをつねに意識して苦しんでいたからか。
これを聴いたランドリ側の反応をいっさい描かない大胆な構成。
ファデットがあまりにランドリへの恋心を語るのを聴いてしまい、俄然ランドリのことが気になり始めたマドロン。いいねぇ、嫉妬ではなく、他者の欲望を欲望するお手本のような心の動き。ここの三者関係がアツいのか?
アツくなかった
p.128 ランドリにとっての鬼火の意味付けがポジティブに変わってるのが良い
p.135 ランドリとファデット、両想いのふたりのすれ違いや機微がすばらしい。盗み聞きしたことでかえって自らの好意が募って空回りしちゃうランドリいい。
3/17(月) p.141〜
マドロン悪役ポジすぎる いちおうランドリに焼きもち妬いてるので三角関係ではあるが、当て馬というか、サブキャラでしかない
他のモブ女性や世間のみんなもなかなか酷いので、シンデレラのような、メインふたりの善良で尊い関係を演出するために他を下げるやつをやっている。よって、ファデットのことは立派に描くが、世間一般の「女」のステロタイプに素朴に言及していもするため、いわゆる現代のフェミニズムとはだいぶ異なる。
シルヴィネまだ弟離れできてないのか。もう18歳。彼らは学校とか通わないのね。義務教育がフランスで確立したのはいつ?
p.167 うおおお これまでの自分の行動の種明かしをランドリにするファデット。《こおろぎ》という蔑称・渾名を用いることで自己から距離を取っているのがいじらしくてまた良い
「あんたのこどもを助ける道は一つしかないね。それは女を好きになることだよ」 p.174
異性愛主義がすごい
ランドリは父親にはファデットとのことを認めさせるも、最後に残ったシルヴィネのラスボス感よ。ほんとうに不健全でこわい
おばあさんの莫大な遺産が発覚してファデット一気に貧乏から裕福へと転身しちゃうの良いのか? "身分違いの恋"という側面は消えた。
シルヴィネの高熱を簡単に治すファデットは、悪魔に身を売った魔法使いでなくとも、十分に神の違いや巫女のようだ。めちゃくちゃカトリック礼賛の小説。
p.204 「死にたい」というシルヴィネを徹底的に説教して論破してカウンセリングするファデット。いちおう自殺タブーというカトリック教義が背景にはあるが、その口上の大半は非カトリックの現代人にも刺さるような、耳が痛いようなもの。あまりに痛烈で気の毒なほど。こんなにスカッとジャパンみたいなことするんだ。
本作においてファデットは神への信仰心に裏打ちされた"ヒーロー"(救世主)なんだなぁ。かと言ってファデットが主人公ではなく、彼女に出会う双子の兄弟をメインに据えることで、ファデットの救世主っぷりが際立つ構成。「私SUGEE系」ではない。スーパーヒロインに救ってもらいたがる、少女を崇高で神聖なものとして客体化する欲望はあるだろう。
これでラスボスのシルヴィネをも倒して(救って)ハッピーエンドかぁ
「さあ、シルヴァン、起きてよ。食べて、しゃべって、散歩して、眠るのよ」立ち上がりながらファデットは言った。「これがきょうのあたしの命令よ。あしたからは、働いてよ」 p.209
シルヴィネを絆して即・ランドリとファデットの結婚。あまりに上手く良すぎている楽天的で多幸的な終盤だ。
ナポレオン皇帝の勝ちいくさの時代だったのだ。 p.213
えっ、そうなの!? 1810年前後か
執筆年代より40年ほど昔なんだなあ
いきなりシルヴィネが軍人となり、それがファデットへの恋心を抑えるためである、と明かされるエンド。……なるほど?? シルヴィネが「負けヒロイン」ってことか。。 最愛の弟の妻に想いを寄せたまま一緒に暮らすことはシルヴィネにとっては耐え難く、出家するように軍隊に入ったらしい。
おわり!! けっきょく、ランドリの物語なのか、シルヴィネの物語なのか、双子の物語なのか、ファデットの物語なのか、ランドリとファデットの物語なのか、3人の関係の物語なのかよく分からん。たぶん全部なのだろう。
"鬼火"少女ファデットの芯のある言動や超絶ツンデレ描写は最高だった。ヒロインぢからが高すぎる。しかし、徐々に、彼女をまるで英雄か神様かのように崇高で全能な存在として描く傾向が強まっていき、ファデットの祖母が莫大な財産を遺していたことがわかり一気に貧乏から大富豪となったり、嫉妬に狂ったシルヴィネをあっさり救済したりと、終盤はやや乗れなさがあった。本作はおそらくキリスト教カトリックの教えを純朴に称揚する教条主義的な小説としての側面が強く、その思想を扱う手つきにはなんだかなぁと思ってしまう。
童話や児童文学のような雰囲気も感じられるが、それらのなかでも、お仕着せの道徳や正義についてのメッセージが埋め込まれた説法みたいなタイプの作品だった。
単純にランドリとファデットという少年少女の異性愛モノとしてとてつもなく強く、また双子の兄ランドリ(弟に依存しすぎている)を絡めた三角関係──ヘテロBL三角関係モノとしても新鮮な味わいがあった。
解説よんだ。
「思想的にはなんの独創性もない」と言い切られててワロタ まあそうだけど。
サンドすげぇ恋多き人生だ……ショパンとか有名人と付き合ってるし。
革命弾圧による失望で、現実逃避のために生み出された作品だと。なるほどなあ
語り手「わたし」は《麻打ち男》で、夜なべの昔話の形式をとっているらしい。他の代表作『魔の沼』『笛師の群れ』も同じ語り手のものだとか。
少女を主人公としたフランス小説で著名なものは、これ以降『悲しみよこんにちは』(1954)しかない。マジか。100年以上空いてるやん(てか『愛の妖精』の主人公ってファデットなの??)
