今読んでいる数冊の小説をバッグに入れ忘れたので、目の前にあった『天使エスメラルダ:9つの物語』を手に取り、冒頭の1編を読んだ。
・天地創造 ("Creation" 1979年発表)
空港で男女が待ちぼうけする話とだけは聞いていた。実際はこんなに空港とホテルを何往復もするとは思ってなかった。
ある島にバカンスに来ている男女2人が帰国するため空港へ向かうが、キャンセル待ちに入れられて何日も滞在を伸ばさなくてはならなくなる。
空港までの車から見える道沿いの森や現地の人々と、ホテルの現代的な設備の差が不気味
清潔・洗練を求めた現代文明のほころびみたいなものを感じる
ズレている会話
洗練された不穏
これらがいかにも〜な文学性を醸し出している。
p.16
新しい場所の最良の部分は、我々自身の歓喜の叫びからも守られなければならない。言葉は数週間後、数カ月後の、穏やかな夜のために取っておく。そんな夜のちょっとした一言が、記憶を蘇らせるのだ。誤った一言で風景は掻き消されてしまう、と我々は一緒に信じていたように思う。この思いそれ自体も言葉にされぬものであり、我々をつないでいるものの一つなのだ。
乗代雄介みたいなこと言ってる。
p.17
「でも、私たちはアメリカ人よ。ご一緒しましょうと誘うことで有名なのよ」
p.18
「あなたって、退屈と恐怖が私にとって同じであることを理解した唯一の男ね」
ジルと僕は夫婦じゃないのか?
なぜジルだけ飛行機に乗せたんだ。1人しか乗れなかったのか、クリスタと不倫するためにわざと残ったのか。
p.23
すべてが新しいとき、喜びは表面的なものとなる。僕は彼女の名前を声に出して言うこと、彼女の体の色を挙げていくことに、不思議な満足感を覚えた。髪と目と手の色。新雪のような乳房の色。陳腐なものは何一つない気がした。僕は一覧表を作って、分類したかった。
ヤっとるやないかい!
p.27
「ドイツ語を喋って」と僕は言った。
「どうして?」
「それを聞くのが好きだから」「ドイツ語、知ってるの?」
「音が聞きたいんだよ。ドイツ語の音が好きなんだ。重金属が詰まっている感じ。"こんにちは" と "さようなら" をどういえばいいかは知っているよ」
「それだけ?」
「自然に話してみて。何でもいいから言ってみて。打ち解けて話す感じで」
「ベッドでドイツ人になりましょう」
結局クリスタはドイツ人ではないの?
会話のやり取りを追うのが結構たいへん。
ひとつひとつの喋ってる内容は別に難しくないが、それらの繋がりが断絶していることが多く、流れを捉えようとするのは無駄かもしれない。
p.30
僕は繰り返し外に目をやり、空を見上げた。前景では、色褪せたスカートをはいた女たちが道沿いに並んでいた。二人か三人ずつ定期的に現われ、湿った光の中に入って来る。骨太の顔、何人かは籠を頭に載せ、こちらを覗き込む。肩をいからせ、剥き出しの腕はピカピカ光っている。
既視感はソーンダーズのセンプリカ・ガールだ。そこに身近にいるのに、見えているはずなのに、同じ人間として扱わずいないかのように振る舞う不気味さ。
うーん・・・・終始「「いかにも文学」」って感じの印象だけ受けて終わった。デリーロやっぱ苦手かもしれん・・・
静かで淡々と、不穏で不条理な展開を記述し、ところどころで抽象的で解釈を喚起するような文章をまるでノルマのように入れ込んでくる。お文学として、いろいろ考えながら読むのには最適かもしれない。のっとふぉーみ
「センプリカ・ガール日記」収録