日本文学

「症候群」大滝瓶太

『徳島文學 第三号』収録 大滝さんの書いた小説(短編しか読んだことがない)で、数理要素があからさまに出てこない、いわゆるふつうの"純文学"を読んだのはこれが初めてだと思う。読み味としては、noteやはてなブログで書いているエッセイ等の記事に近い。 …

「花ざかりの方程式」大滝瓶太

『SFマガジン2020年8月号』掲載これは……すごいな。かなり好き。 めちゃくちゃパワーズっぽい。というか、『ガラテイア2.2』しか読んだことがない(しかもまだ途中)ので、要するにガラテイア2.2っぽい。 ひとつの発想とか思考実験で勝負しているのではなく、…

「クチュクチュバーン」吉村萬壱

文春文庫『クチュクチュバーン』の表題作を読んだ。 うーん、ぶっとんだ小説とは聞いていたが微妙。 たしかに書かれている内容はかなり異常ではあるけど、理解の埒外ではなく、むしろ親切でとっつきやすい印象。 ちゃんと小説的に数名の登場人物を描写して再…

「象の消滅」「カンガルー通信」村上春樹

・象の消滅(『象の消滅』収録の同名の短篇)読了日:5/8読書会の課題本で読んだ。『風の歌を聴け』以来、数カ月ぶりの村上春樹。 ストーリーはシンプル、文章は相変わらず読み易く、これぞ村上春樹の短篇って感じ。 ちょっとした非現実っぽい出来事が起きて…

「パン屋再襲撃」村上春樹

短篇選集『象の消滅』(黄色い本)収録の短篇「パン屋再襲撃」を読んだ。 「パン屋襲撃」を読む前に読んでいいのかと思いながら読むうちに、実は「パン屋襲撃」なんて作品は存在しなかったのではないか、「パン屋再襲撃」という題名から1回目の襲撃も前に書…

『アサッテの人』諏訪哲史

読了日 2020/1/16 行方不明になった叔父は、突然「ポンパ」などの意味のない言葉を発する「アサッテの人」だった。 彼の残した日記や彼の亡き妻(朋子)の証言などをもとに「私」は『アサッテの人』という小説を書こうとするが、彼のアサッテ同様の、言語や…

『最高の任務』乗代雄介

『群像』2019年12月号にて。 『生き方の問題』以来、この作家を読むのは2作目。芥川賞候補になったと聞いて読んだ。 親しかった叔母(ゆき江ちゃん)を3年前に亡くした景子は、大学の卒業式のあと、列席した家族に電車で群馬へ連れられる。どうやら「小学5年…