『冷静と情熱のあいだ Rosso』江國香織(1999)

 

 

2024/5/13〜22(水)

 

5/13(月) 1章
自己陶酔的なお洒落な文体 こういう類の小説読むことほとんどないからキツいけど新鮮かも
ミラノ出身の主人公アオイ 大学4年間だけ日本にいて、今は25歳くらい?
日本での悲恋を抑圧しながら今彼(アメリカ人)のマーヴと同棲をしている。


5/14(火) 2章〜3章
ナタリア・ギンズブルグを読むアオイ 5月に誕生日を迎え27歳になる。
優し過ぎるマーヴに庇護されながら、日本での順正との記憶を秘匿する。
ヘンリー・ジェイムズ
マジで大江健三郎かよ 静かな生活って
アオイは1970年生まれ


5/16(木) 4章
梅ヶ丘のアパート
リットン・ストレイチー

 

5/17(金) 5章
やっと物語が大きく動いた。東京から逃げ帰ったミラノでの静かな生活が脅かされる。
なんというか、おそろしく実直にフリを効かされていたので、やっとか、という感じ。
イタリア(ミラノ)、日本(東京)、アメリカ(ニューヨーク)の三角関係ならぬ三国関係の話ではあるのか。

日本語で書かれて日本で出版された日本(人作家)の小説だが、主人公はミラノ出身で、ミラノでのイタリア語(と英語)による日常生活が描かれている。これは、翻訳小説を偽装しているということ? 文体は全然そんなことないが、お手軽なお洒落感と高踏感は醸し出されている。

ストーリーにも同様のことが言える。日本とイタリアを反転させて、東京育ちのイタリア人主人公が、大学4年間だけイタリア・ミラノに留学して熱烈な悲恋を経験し、東京に逃げ帰って表面上は静かな生活を送るも、必死に忘れようとしていた異国での過去の現在への侵攻を食い止められず……という設定にする方が発想としては自然な気がするが、逆になっている。この反転操作の意図というか効果を考えたい。

つまり、日本・東京をこそ遠くの、情熱的な、忘れたい「異国=過去」に仕立て上げようとしている。(日本の)読者たちがいる「いまここ」をこそ、かつてのドラマチックな悲恋の舞台に設定することによる臨場感と高揚感を演出している? バスタブから一歩も出ないまま、本を開くだけで自分が生きてきて今ここにいる地が(誰かにとっての)抑圧したいほどに情熱を燃やした場所に変容してしまう。なろう異世界モノと形式上は対照的だが実質は変わらん気もする。そんな手軽な興奮を与えられるからこそ、ある時期のこの国で大ヒットをした……? ←売上の理由の考察はまた別では?

馬場……早稲田?

そういや順正も帰国子女だった。ニューヨーク育ち。つまりあおいは、アメリカ出身の日本人の元彼と、ミラノ在住のアメリカ人の今彼のあいだで葛藤している。図式的でお行儀がよい。

マーヴが運転でバックするときにサイドシートに手を回す動作が好き、とか、あまりにも陳腐な描写をところどころマジで入れてくるのにビビる。会話の台詞間に空の情景描写を挟むのとかも。

 

5/19(日) 6章
日本から来たイタリア出身の旧友、崇が結局帰国しちゃって、まだまだ全然おはなしが動かない。徐々に日本での順正との記憶を抑えきれなくなってきているだけで、基本的にはずっと同じことをぐるぐるダラダラと描いている。退屈だ! もしかして最後までこんな感じなのか? 勘弁してくれ……

 

7章
友人ダニエラが結婚→妊娠 幸福そのもの
あおいは学生の頃に順正との子を孕んで勝手に堕した? それが破局に繋がったのかな

 

5/20(月) 8章
まーじで話が進まねぇ。うざすぎる
『HAM ON RYE』 ブコウスキー『くそったれ!少年時代』のことか。

 

5/21(火)  9章
稽留流産……胎内で亡くなったのか
やっと順正からのコンタクトが。まだ手紙だけど
最悪のタイミングで順正の父親と謎の女性(母?)が家に来て、発覚してしまったらしい。
順正の文体はやっぱりきしょい。罫線を手紙で多用するか?
マーヴがかわいそうではある。過去を引きずる罪の意識がそのまま過去を美化する自己陶酔のロマンチシズムに奉仕する。
ただ、マーヴの取引先のゲスト接待にアオイも連れて行くのはちょっと恐ろしい。

 

10章
やっとマーヴと破局したか? なんでもいいから話が動いてくれ、頼む!!

 

11章
マーヴと別れて一人暮らしに戻る。マーヴまだアオイに愛想尽かさずに諦めてないの凄いな。まぁたくさん投資したもんな。
長時間バスタブに浸かって本読む生活憧れるけど、冷えはしないのだろうか。追い炊きしてないよね
このまま順正との大学生活は詳しく語られることがないのか、それとももう一冊のほうで読める(読まないといけない)のか……

 

12章
5/22(水)
古いジュエリーはこの物語にとって何の象徴か。愛に生きる女性?
マジで会えるんかい ラノベ過ぎて何も言うことがない

 

13章

終わった~~

フィレンツェのドゥオモで10年前の約束通りに順正と再会して3日間たっぷり愛し合うが、そこで再び別れてそれぞれの生活へ戻るエンド。そっかぁ…… そのままもっかいくっついたところで(こちらが)困るだけだが、だからといってこういう終わり方でもまったく面白くはない。終わり方はどうでもいいな。とにかく全体的に退屈で虚無に満ち溢れていた。けっきょく、ラストの2, 3章くらいで事態が大きく動いてそのままあっさり終わる構成が、ほんとうに意味がわからない。おそらく、雑誌への交互連載という形式がその原因の多くを占めていると思う。これだけ読んで、江國香織はクソだとは言えない(のがまた虚無である)。

順正視点であろう辻仁成のほうを読んで評価がひっくり返るとはまったく思わないが、仮にそちらが面白かったとしても、こっちがくそつまらんかったことは変わらない。これまで読んだ小説のなかで、トップクラスにつまらない、嫌いな作品だった。

 

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