『悪い娘の悪戯』(1)マリオ・バルガス=リョサ

7/15 読み始めた。
~64ページまで


第1章 チリからやってきた少女たち
面白い!文章が淀みなくすいすい入ってくる。ディテールの描写のためにかなりカタカナの固有名詞が盛り込まれているのに読みにくくなく、流し読みでも構わないからとにかく先を読みたい!という気持ちにさせてくれる。
「『最高の夏』に出会った謎めいた少女」概念、なんと自分好み、オタク好みの滑り出しだろう!でも当然ながらオタク臭さはなく、ペルーの1950年代の若者たちの雰囲気がひしひしと伝わってくる。
導入部たる第1部を20ページ程度でスパッと終わらせるのも、ノーベル文学賞作家が本気でエンタメに徹している感じがして良い。これはすごいぞ、楽しみだ〜〜〜!

 

第2章 孤高のゲリラ兵
p.64まで。
いいねえいいねえ。
幼い頃に出会った1人の女性にずっと心を奪われ、人生の節目節目で(都合よく)再会したり、自分より遥かに高スペックな男に一時的に取られたり、身体を許しても心はこちらを向いているのか心許なかったりするこの感じ…『おやすみプンプン』だ!(大声) 愛子ちゃん!!!今年も七夕が終わったね……

 

彼女をファム・ファタルたらしめているのは結局のところ「僕」自身なんだよな。1人のごく平凡な女性に幻想/理想を重ねて、押し付けて、相手もそれに気を良くして、愛ではない歪んだ形でこちらに執着することになる……こういう物語が性癖です。
章ごとに呼び名や立場、属性が目まぐるしく変わって、「ほんとうの彼女」が像を結ばないところがいいな。それでも「濃い蜜色の瞳」のように一貫している特徴もあって……うーん完璧!

 

マジでリョサリョサ先生にエロゲの脚本書いてほしい……というかエロゲ化してほしい……

 

ところどころ気さくに「まぁ〜〜なんだけど」「〜〜でね、」というようにこちらへ語りかけてくるのも良い。ただでさえ読みやすい滑らかな文章に拍車をかけている。
「彼女」以外のキャラもいいんだよな。ビア樽パウルとか、都合が良すぎるほど良いやつで、別れのシーンはザ・王道なんだけどしみじみ感じ入ってしまった。
他にも何だかんだで立派な職を得ていたりとか、この物語は「都合の良い要素」がここまででも既に多すぎる。それでもうんざりするようなことはまったくなく、面白ければいい、という真理を突いている。流石です。

 

1章での決闘を宣言したけど事前になんとか仲直りしたくだりとか、この章でのパウルに頼まれて5万ドルのスーツケースを1週間部屋のベッド下に隠すハメになるくだりとか、「大事件に発展しそうだったがしなかった」挿話が定期的にある。これらは本筋には関係無いんだけど、本筋に"なりえる"存在感があり、かつ運命の選択でそうはならなかった機微が感じられて、間接的に物語の読み味、重厚さにかなり貢献しているのではないかと思う。

またストーリーを進める以外の情景描写や"文学的"描写がとても少ないけれど、たまにすごく効果的なタイミングで最適な文が差し挟まれる。小説の基礎能力が高い。