文春文庫『クチュクチュバーン』の表題作を読んだ。
うーん、ぶっとんだ小説とは聞いていたが微妙。
たしかに書かれている内容はかなり異常ではあるけど、理解の埒外ではなく、むしろ親切でとっつきやすい印象。
ちゃんと小説的に数名の登場人物を描写して再登場させてたり、お話の作法に則ってるな〜と。
シマウマ男とかなんなんだろうな、「存在することは見られること」「見るために存在する」とか結構ふつうに理性的な思想が背景にあるのもこの作品では残念に感じられた。
まだ世界観がわからない冒頭がいちばんインパクトあった。
最後の質問男はすき。
頭が角だけになっても集合体になっても自意識がある(という描写をする)んだなーとか、シマウマ男の輪廻転生的なやつとか。
描写がグロいとも思えず流し読みできてしまうのは、想像力が欠けているのだろうか。本作は最初のほうでリアリティレベルを極限まで引き下げているため、それ以降どんなエグい描写があっても自分の身に引き付けて想像することをしなくなっている。アイアムアヒーローの世界に没入してしまったのは、もちろん漫画という視覚メディアの性質もあるだろうが、あちらはリアリティレベルをかなり保ったまま真面目にパニックモノをやっているからではないか。
あとは、内容はエグいが文体がすごくまともなのも合わない理由のひとつかもしれない。
舞城と近いのかな。舞城はいちおう文体も特徴があるけど、個人的にはつまらない。
どちらかというと、大した内容でないのに文体・文章で魅せるのがすき。ギャディス…は違うか。コルタサルとか。
クチュクチュ……の系譜
・夜明け前のセレスティーノ アチャスアチャス
・ピンポン ピンポンピンポン
他にもありそう