『亡霊は夜歩く』はやみねかおる(1994)
2年前に『そして五人がいなくなる』を久しぶりに再読して、子供の頃は分からなかった良さを見出してめちゃくちゃ感動しました。ただ、そのとき感想メモを取っていなかったので、本ブログへの感想投稿は、このたび読んだシリーズ第2作目『亡霊は夜歩く』からとなります。
おそらく小学生の頃以来の再読
2025/3/4(火)〜5(水)
夢水清志郎、永遠の憧れの大人すぎる。こういう大人になりたかった…… ろくに働かずにひたすらソファーで本読んだり猫のノミ取りして、隣の家の三姉妹やお母さんに食事などの面倒を見てもらう。男の有害なロマンが詰まったキャラクターだ……
フーダニットでもハウダニットでもなく、問題はホワイダニットである、と最初に提示する。前巻で教授が事件を解決しなかったのも、犯人の動機=真の目的を見抜いていたからだ。みんなを幸せにするために、名探偵がいちばん見抜かなければいけないのは犯人の動機である、というテーマがシリーズに通底している。
レーチもそうだけど、「ホワイトヘアードデビル」の前川先生とか、文芸部誌「それがわたしにとってなんだというのでしょう?」通称それわた、など、すっかり忘れていたものの、確かに記憶の奥底から呼応するものがあり、めちゃくちゃ懐かしい。
やっぱ文章うまいな〜 直喩で幾つも目を見張るものがある。
前巻は遊園地が主な舞台だったが、今回はがっつり学園オカルトミステリをやろうとしている。明治時代からの歴史のある虹北学園。色んなマイナー同好会があるのとか、『映像研』より先に、自分の好みを根っこから規定していたんだと思わされる。
ワープロ、フロッピーの時代
『我が闘争』の原書って、ドイツ語読めるってこと??
15年前の文芸部誌に問題編だけの名作学園ミステリを書き残して自殺した先輩の謎。校則や学校への悲痛な叫び。なんだか『氷菓』の源流のような話だ。そして、学園祭の話なので『クドリャフカの順番』でもある?
てか、虹北学園って私立中学校ということ? でもないか。真木先生の実家の話からすると。公立なのに駅通学なのか……どゆこと?
序章のこれも
落ちてきた机よりもまず、雨なのに白線の魔法陣がそのまま残ってるほうがおかしいだろ
ずっと、大人や社会、規則に縛り付けられる可哀想な子供の声を大人がいかにして聴いてやれるか、ということを主題にしている。小学生だった当時はあまり気にしていなかったけれど、大人になって、はやみねかおるのこれを書いた熱い想いがよく分かる。
3/5(水) p.164〜
そういや「論理学教授」って実際にいるのだろうか。哲学や数学にふくまれるような……
やっぱ電車通学ではあるっぽいな。駅や電車を使うシーンがほぼ描写されないので疑わしかったが。
時機が来るまであえて事件の解明をしない名探偵。伯爵事件もそうだが、真犯人の思惑を知り、対話をして、協力関係を結んでいるから。つまり、この世界では純粋な悪意によって引き起こされる後味の悪い事件はなく、大抵は、なんらかの切実な想いによるもので、教授はそれを尊重する。
大人の名探偵が早々と謎を解いて、子供に明かさないのは、ともすると鼻についてしまうはずだが、そうならない。夢水のキャラ造形が素晴らしいのと、「大人が必死に子どもを守っている」ということは、当の子どもたちにはそんなに知られる必要がなく、ただ生き生きと幸せに過ごしてほしい、というメッセージを感じるから。教授はヒーローだが、救い方が本当にさり気なくて格好いい。
大人は子供に対して威張り散らすように自らの力を誇示するべきではない。ただ「もう大丈夫だよ」と言うだけでいい。安心させてあげることが、唯一にして最も大切なことだ。
怒ると怖い「最強の人」であり、今では珍しい「日本の母」であるらしい羽衣母さんの造形は、なかなかに「主婦」幻想の賜物というか、母を神聖視して客体化するミソジニーに根ざしているなぁ。小さい頃からこれで育ってきたので、懐かしさは感じるけれど。。
平気で何日も食べるのを忘れる教授に「およめさん」をあてがおうとする三姉妹の思考とかも、そう。男主人公ではなく、亜衣たちは生き生きと主体的に描かれているのでまだマシではあるものの。
レーチと亜衣の「青春」描写、ぜんぶ最高
亡霊の事件の陰で、「なぜサボり魔の一匹狼のレーチは学園祭のクラス委員になったのか」という謎が時代に明かさられるミステリーが進行する。
自分の小説の初めてのファンがくれた50円玉をネックレスにしてくれるレーチ。レーチ自身のお金じゃないところがまたいいね。あくまで純粋な読者のファンを獲得できた嬉しさが結晶しており、それをレーチの優しさと粋さが支えるかたち。
ハードルのゴム部分を使ってたのか。それ以外の部分に目を向けさせるトリックいいね
忘れっぽい教授は、自分の学生時代を忘れている!! この子ども時代の不在が、彼をミステリアスな名探偵として際立たせているのか。たしかにまったく少年時代が想像つかない。生まれながらの「大人」であり、子どもを守る名探偵である。
教授がいかにして育ち、名探偵になったのかという過去が明かされたら、彼の人間的な厚みが出て共感しやすくはならと思うけれど、それじゃだめなんだろうな。
すべての大人には子ども時代があったこと。それはラーメン屋で真木先生も言っていた。そんな彼女の自殺を止める教授。子どもだけでなく、かつて子どもだった大人をも救う、子どもだったことがない名探偵。今でも子どもだとも言えるが。
え、ブラフじゃなくてマジで教授と真木先生のヘテロロマンスもやるのか…… いい感じになる主人公たち中学生カップルとは対照的に、互いに引かれあいながらも一線を引いて別れる熟れた大人のカップル……。
内なる自分の抑圧された声。亡霊の条件。分裂する自我。
うおおお もうガッツリ告白してるようなもんやんけ!! 両想いでカップル成立しとる……
エピローグの日常の謎、ささやかでお見事だなぁ〜
亜衣も日常の謎を部活で書いてるのね
おわり。
最高の学園ミステリだった……
夢水もマチトムもわたしの青春、いや、より古い原体験です。。
青い鳥文庫の2大ミステリシリーズのもう一角、『パスワード』も超好きで再読しているところです。(いま6巻まで)



