『乱れからくり』泡坂妻夫(1978)
『乱れからくり』
(わたしは新装版じゃないほうで読みました)
※今回はお試し企画として、この『乱れからくり』を友達と電車旅しながら同時に読んでいきました。(2人ともが同じ本を買い、1章ずつ読んでは感想を語り合う形式)

1章か2章ぶん読むごとに、次の駅で降りて暫定の感想を話し合う……というのをやろうとしていたのですが、選んだ路線が過疎すぎて、次の列車が2時間後とかになってしまったため早い段階で企画が破綻。4駅ぶんくらい歩きながらなぜかひたすらウミガメのスープをやりまくる時間(ふたりでよくやります)や、シンプルに観光している時間をはさみ、最後は駅ナカのドトールで閉店時間までひたすら読むことに……(それでも1日では読み切れず、解散した翌日に無事ふたりとも読み終えて通話で感想会をしました)
なぜ『乱れからくり』なのかというと、わたしが5作くらいテキトーに国内ミステリで積んでいる読みたいものを挙げて、その中から友人が選んでくれました(両者ともにミステリ初心者です。もちろん初・泡坂妻夫) 「読みながら感想を話し合う」のに向いてそうなジャンルとして長編ミステリを選びました。
※ネタバレ注意
2025/3/1(土)〜3/2(日)
1章
読むペースが相手の方が2倍早くて草 焦る! 同時にひとつの本を読む体験をしたことがないので新鮮だが焦燥感もある
まだ導入部 三人称 文章は端正 やや古風
23歳の勝敏夫が主人公か。プロボクサーの夢を諦めた男。
30過ぎの宇内舞子がひとりで切り盛りする会社に採用され、いきなりの仕事。からくりおもちゃ会社の制作部長の妻の身辺調査? 馬割夫婦は何歳くらいなんだ。
そこそこワクワクする導入
舞子さんのキャラ良さげ 過去が気になる この人が探偵役? 敏夫くん?
からくりが早速出てきたが、物理トリック系の作品なのか。ハウダニット
敏夫のボクサー経験が後に生かされるのか……
2章
時計の遅れを巻き直さなきゃいけないの時代感
時刻トリック、アリバイトリックある?
玩具全盛の時代なんてあったのか 70年代……
電流駆動のレーシングカーか 1, 2アンペアってデカ過ぎない??
電車に乗った!! 現実とオーバーラップする
赤い実の柿の木 真棹の服もそうだったよな モチーフ?
敏夫くんがピュアでかわいい
舞子さんのサービスシーンあって草 うおおお
柔道三段!? 裸見られても笑い飛ばす舞子さん良い
真棹の痴態を妄想して、椅子で倒立し始める
「看護婦」!
3章
マジで真棹が(敏夫にとっての)ヒロイン枠なのか? 大事故でパニックになっている状態でも乳房に手が触れてどうこう……じゃねえよ笑
依頼人が謎の落下物による事故で亡くなる。急展開だが、どうなるんだこれ。殺人事件なのかも分からん。
重力の虹しか連想できない
舞子さん犯人説?
真棹と舞子は対照的な造形
4章
舞子は元警官か。「婦人警官」といちいち有徴化される時代
七万円の賄賂を受け取った真相はいかに
5章
玩具業界の歴史に詳しすぎる これ本筋に関係ないんかな
ミルハウザーを連想する
6
マドージョ=魔童女
敏夫くんとかつての舞子は似た者同士 よく考える前に行動する派
なるほど、舞子は冤罪事件の私怨を晴らす為にこの件を追っているのか
舞子さん既婚なんだ 夫は死んでる?
6
なんかまた若い女性が出てきた。カオリさん
住職までからくりの蘊蓄を語りまくる。全体の1/4くらいはこの蘊蓄パートでは
からくりの仕組みは技術と詐術に分けられ、現代では後者が減ってしまったと嘆く。ミステリで扱いやすいのは後者だろう。物理トリックに見せかけて人為的なトリックということか。
ねじ屋敷 館モノの要素もある? ゴシックのフェティシズム
7
幼児が死ぬの可哀想😢 状況が不気味だし……
カオリはやっぱり敏夫にアプローチしてきた。エロゲ要素
舞子さんの旧姓は油川(ゆかわ)
p142 敏夫がカオリに、ボクサー時代の負け試合の話だけをしたの好き 優しさというか
真棹さんと2人っきり来た〜!
p152 宗児こわすぎる〜!!
真棹本人がふつう喋らない内容だけど、夫と息子を続けて亡くした夜、酔っ払った状況ではリアリティがあり、ここの語りはかなり良い。
自動人形は所有される女性の比喩かぁ。舞子さんも狙われてるじゃん
エロゲきたあああああ!!!
時代性とかではない、滲み出るような女性蔑視が通底してはいる。
8
こんな時にこいつら何やってるんだ→カオリと敏夫
うわ〜〜 グロいよぉ〜〜
でも変死体人形の話をしたばかりなので、捏造の可能性もあるか?
9
p182 敏夫、屍体見たことあったのか
p190 「枯れ井戸」という死に際の台詞、十中八九「カレイドスコープ」やんけ!
p199 芸術でも科学でもない、からくりは究極のエンターテイメントであり自己満足
協力プレイで万華鏡が凶器である推理生まれて草 なるほど〜 カレイドスコープで止まって、その先ぜんぜん考えてなかった。でも確かに万華鏡で左眼を撃ち抜かれたとすると、先の黒墨のいたずらも伏線として最適に機能しているし、象徴的にも見事だ。じゃあやっぱり犯人は大本命のソウジか……
すべての凶器はこれまでに出てきたからくり説
熊んべでどうやって2歳児に服薬させた? 液体で飲ませたのでは? 消化されたら元がわからんし。
隕石がどうからくりになるのかさっぱり分からん。
でも、殺人犯ならぬ殺人人形ってそれはそれで怖いな〜〜 感情を持たない無機質な機械がただからくり仕掛けに従って作動して人を物言わぬ人形へと変えていく…… この、人形の狂気と美をこの作品で表現しようとしているんだろうなぁ
200ページまで読んで解散!!
おい!!! ソウジ死んだんだけど!!!!!
逆立ち人形の内部に毒針でも仕掛けられてた? 水銀毒ってことか
犯人が人形に殺されたあともなお、自律して人形が殺人を続けるんだったらめちゃ怖。これ以上なく「乱れからくり」だ。
10
敏夫めっちゃ真棹にアタックするやん
毒針は確定かー
ソウジが真棹を殺そうとして仕込むも、断られたので腹を括って自死した(自身の造った殺人人形に殉じた)可能性も一応残ってるよな。でもまぁトモヒロがソウジを殺そうとして予め仕掛けてた線が固いか。
それぞれの犯人違ってそうだな〜 すげぇ複雑な事件群だ。一族で互いに殺し合っているかんじか。ホワイダニットも重要?
トウイチがソウジの子の可能性はある?
11
金沢編 埋め立て工事で揉めてる河北潟きたああ
12
やっぱり迷路の地図と実際にはズレがあったのか! 迷路自体がからくりであり、そして地下洞窟の入り口であり地図である。位相的に同じアイデアおもしろい
にしても隠し扉に地下洞窟に江戸時代からの金沢の豪商の埋蔵金とか、なんだかハナシが一気に王道アドベンチャーチックになってきたぞ
3/2(日) 朝 p.264〜
鉄馬まで死んじゃった。でも真棹さんの仕業じゃなくて、時限式のからくりで既に亡くなった誰かが仕掛けたという真相のほうが面白いはず。。
13
擬装して遺産をもって出奔した馬割作蔵、金沢との繋がりを隠さなければならないはずなのに、玩具製作で身を立ててみたり、その名前を師匠にあやかったりと、手掛かり残しすぎでは? 藩や幕府にバレたらどうすんだ
14
鉄馬の部屋の掛け軸裏にある抜け穴に気付かない警察連中、無能すぎないか? そんなに屋敷の部屋そのものは捜査してないのか
鉄馬が部屋で殺された→掛け軸裏に抜け穴があった
ならミステリ的に御法度だけど、読者に提示する順序を逆にして、
地下洞窟を通って掛け軸裏から鉄馬の部屋に出た→鉄馬が殺されていた
ならギリOKなのか。
からくり仕掛けそのものだけではなく、それを物語中でいかに提示するか、という広義の演出までポイントだろう。迷路の壁のからくりも、地図を提示したり石椅子で伏線を張ったりして、ある程度ちゃんと読者が気付けるようヒントを散りばめてフェアにやっている。
逃避行だ〜 真棹にぞっこんの敏夫が考えなしに暴走している
修善寺か〜
15
「〜ずら」とか「〜さ」とか、静岡方言が強すぎない? 伊豆の人ってこうなのか。70年代だとそうなのか
とにかく真棹を自分のものにしたくてたまらない敏夫。願いが叶ってよかったね。こわいよ
敏夫の推理で逆に合っているところはあるのか? アヒルに繋いで池に沈める必要ある? ただ投げ入れるんじゃだめなん?
罪を犯した(?)女を助けて逃避行→初夜→寝てるうちに逃げられる、というこれ以上ないテンプレ展開
16
凶器万華鏡の行方はそういうからくりだったか。予想出来るはずないが、まぁギリ納得できる。庭の急な斜面はそういう意義かぁ。
やっぱり透一はトモヒロの子じゃなかったか〜〜 最初に死んだ人間が、その後に起こった連続殺人事件の犯人だとはまず思わないからなぁ。やられた。
じゃあ隕石はなんなん?
17
病床のトモヒロの輸血パックも伏線だったか〜 透一くんの血液型がBだというのは覚えてない。初出情報?
トモヒロが不能になったのもそういうことか〜
真棹の「母性本能の愛」とか、現代ではまず通用しない価値観のオンパレード。
甘い物の好き嫌いの話もそういやあったなぁ
……本当にトモヒロ死んでるよね? そういや死に際は全身包帯巻かれてミイラ状態だったけど、別人だったとかある? でも死んでいないなら、「自動連続殺人」という核心が揺らいでしまう。
「電池がなくなる」!! ここにきて、すげぇ素朴な言葉の綾トリック!!! 確かに電池が入ってないところを見たわけではないかぁ。。
流石に宗児は電池と薬瓶くらい見分けられると思うけど……
万華鏡はもともと発動後に簡単には見つけられないよう計画を練っていたのね。東屋周りの地理が周到に描写されていた理由だ。そういやあの日カオリの誕生日だったのも忘れていた。
カプセル錠剤の中の毒薬だから、カプセル自体の素材の違いで飲み込んでも吸収の有無で差をつけられるのか、なるほど。……鑑識、カプセルの材質差くらい調査で気付けよ!!! プラスチックかゼラチンかなんて。。 いや、鉄馬が死んだときにはすでにゼラチンカプセルは消化されているから、やっぱり証拠が残らないのか。そういうことね、ごめん鑑識の皆さん。
でもプラスチック製であることはちゃんと調べれば分かるはずだよなぁ……
これ、最初の隕石落下だけはマジで偶然の事故としてまとめそうだな……
トモヒロが妻を尾行するよう舞子へ依頼したのも、アリバイ工作のためか〜〜
え、トモヒロは、自動連続殺人の用意を終えた後で、その目的である埋蔵金が天保銭だったことに気付いたってこと? それなのに、計画を中止せずに決行した? ようわからん
18
ああ、そこも「からくり」だったのね
敏夫が小銭を取り落とす、という行為を最初と最後でリフレインして作品を締めくくる。
真棹はけっきょく、(偽の天保銭に気付けば)大金持ちだけれども、それを敏夫も教えず、もう関わらないことにしてのコミカルでなんだかポジティブな後味の残る喜劇的な幕切れだ。
感想まとめ
隕石はからくりでもなんでもなく「天罰」かい!!!!!というズッコケポイントはあるけど、まぁそれ以外は、よくぞこんなからくり愛に満ちた魅力的で精巧なミステリを作り上げたものだと感嘆するほかない。細かな納得できない荒い点は幾つかあるとはいえ。
ただ、その数々のトリックを駆動する人間関係・ストーリー面に関しては、女性差別的な価値観がものすごく色濃くてさすがに厳しい。23歳の男主人公・敏夫くんもねぇ……若いね、の一言で済ませてあげられたらいいんだけど。無謬ではないよね。
裏表紙のあらすじで「女流探偵」という有徴表現で紹介されている本作の名探偵ポジションの宇内舞子さんは、真棹さんやカオリさんとは違ってサバサバしてて結構よかったんだけど、それはそれで、「女らしさ」という蔑視を反転させただけで本質的には同じ危うさがあるのでは?とも思う。わからん。
ゼンマイを巻いた張本人が亡くなっても、仕掛けられた通りに無機質に殺人を遂行していく「乱れからくり」という設定は見事だし、個々のからくりの伏線も巧妙だった。ただ、それでも延々と途中何度も続く、からくりや人形の蘊蓄パートはあんなにいらなかったよね?? 作者の趣味だよね?? 「からくりトリックに必要な伏線を張るくだりです」という大義名分にかこつけて、ただ語りたかっただけだよね??
『堕天使拷問刑』のおすすめモダンホラーの章みたいなことが、昔からミステリでは行われていたんだな……と知った。
終盤、庭の迷路の隠し扉から地下洞窟の存在が発覚して一気に冒険モノになるのには苦笑いした。「本格ミステリ」でこういうのってアリなんだ。むしろ頻出要素なのかな。「ヒロイン」との逃避行(&ベッドシーン)パートもあるし……
「最初に死んだ奴が真犯人」モノって割とよくあると思うけど、実は死んでませんパターンではなく、ちゃんと死んでいて、時限式の殺人装置をたくさん仕掛けていたし、かつ、それが「自動人形」の乱れからくりというメインテーマに完璧に組み合わせられていたのが良い。美学がある。
隕石をどうにか好意的に捉えるとするならば、初めにド派手な、事件なのか事故なのかも分からない異様なイベントを置くことで、以降の精密な自動連続殺人の本性(からくり性)を見通しにくくする、よく出来たブラフ、だとは言えるか。それでいて、トモヒロ本人は単に海外からの遠隔自動殺人を計画していたところを、仕掛け人の死後に動き出す怪しく狂おしい自動殺人へと昇華させた最後の1ピースであり、からくりの起動装置(スイッチ)でもある"天罰"だった……ことの妙を味わい深く噛み締めることもできるか。
また、いくらトモヒロの用意した自動連続殺人が結果的に成功したとはいえ、完全に思惑通りだったわけではなく、予想外の事態や偶然が折り重なって「乱れ」たものである、という点は重要だろう。自分は死んじゃうし、真棹は海外に避難させられずに渦中に巻き込まれちゃうし、透一や宗児の毒殺もシチュエーションが想定外だし。よって、自動人形は無機質にからくり仕掛けに従って動くとはいえ、すべてが「必然」なのではなく、そこには人為や人の世のゴタゴタによる「偶然」が満ちている。というより、原理的に、それは必然と偶然のアンビバレンスに彩られているのだ。からくりには純粋な技術のみに頼ったものと、人為を活用したトリックの2種類があり、本作の事件は、両者が──必然と偶然が──乱れもつれあって成り立ってしまっているものである。そうした全体像を鑑みれば、最初の「事件」である隕石落下が偶然によるものだとして処理されることにも必然性がある……のかもしれない。知らんけど。
……まぁ、隕石も大仕掛けのからくりトリックによるものだと信じて、後ろのタンクローリー内には巨大強力磁石が積載されていて云々……とかあれこれ頑張って考えていた時間はなんだったんだ!と文句を言いたくなる気持ちはまだまだあるけどね!!!
人間不在のからくりによる連続殺人だけではない。人間とからくりの図式は容易に反転し、倒錯する。
からくりが人間らしく、人間はからくりらしく見えてくる。そういう不気味さが本作からは立ち昇る。
ミステリでは一般に、人間をトリックの駒として形骸的に造形して描きがちだ。それが「人間を描けていない」と批判されることも常だが、こと本作では、むしろその「登場人物の薄っぺらさ」そのものが、からくりという主題に照らして意義深く必然性を帯びる。人間のなかの機械人形性と、機械人形のなかの人間らしさ。たとえば、トモヒロによって錠剤型の甘い菓子を好むように"仕組まれた"あわれな2歳児が辿った結末は、人間のなかでももっとも「単純」な幼児というものの機械性を残酷にも浮かび上がらせる。こういう行動をするだろうと予測された通りに動いて殺されたカオリやソウジ、鉄馬も同様である。
果たして、彼ら人間も大きな「からくり」の一部品に過ぎないのか、それとも人間というものの内部はさまざまな「からくり」によって構成されているのか。人間とからくりのめくるめく関係に幻惑されること。それが『乱れからくり』を読むことの効果であり、副作用であった。本書を読んで以上のような感想を出力するこのわたしもまた、精妙か単純か、人間というひとつのからくりに過ぎない……
・引っ掛かるところはいくつかあるものの、全体としては見事なミステリと云う他なく、おもしろかったです。
・レジェンド推理作家の代表作を読めて良かったです。
・(電車旅×読書会を)今度やるときはもっとダイヤが密な路線でやる。
・今度やるときはその日じゅうに読み切れるよう、あらかじめ前半部は読んでおくなどして調整する。
・いい歳した大人になってまで休日こんなことに付き合ってくれる友人、マジで貴重。ありがとう

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