『アルバトロスは羽ばたかない』七河迦南(2010)

 

 

 

 

hiddenstairs.hatenablog.com

『七つの海を照らす星』の続編を読みました。

 

 

※ネタバレ注意!!!!!!!

前作と今作を未読の方は絶対にこの記事を読まないでください。

 

 

 


2025/1/31〜2/4

 

1/31

高校の見取り図! がっつりそういう学園ミステリなのか

冬の章1

え〜殺人未遂事件を扱うの? 日常の謎系じゃなくなっちゃうのか
前巻は、一見バラバラの短編が最後に一気に収束する構造だったが、今回は最初から、あるひとつの事件を軸として提示するかんじか。

 

 

春の章

佳音さんが学習ボランティアとして七海学園に入ってる! 実際そういう制度あるんかな
ランサム『ツバメ号とアマゾン号』シリーズ

ja.m.wikipedia.org

 

最初っからすげぇいい話だった……

悲惨で陰鬱なだけの児童のエピソードから、希望的な「真実」を引き出す。信じるに値する、信じてほしいと心から思える物語を。推理とは希望に向けた祈りであり、人が希望的に生きていくための物語を見出す戦略である。

暴力から愛への鮮やかな転換。ミステリとしての伏線の貼り方も相変わらずうまい。というか、そもそも「謎」だとすら思わなかった。普通にそういう可哀想な話として受け入れてしまっていた。

すごくロマンティックな愛に満ちた真相なのに、そこには同時に、行政区画と福祉の手続きという、きわめてお役所的・機械的なシステムが重要な背景として横たわっている、そのミスマッチ感がこの七海学園シリーズ独特の味わいで良い。なんとしてでも児童福祉という行政の機能で人間を、可哀想な子どもを救ってやるんだ、そのために法も福祉も行政もあるんだ、という眩しいほどに善にして熱い思想が架空となっている。(『虎に翼』の、「家庭裁判所は愛の裁判所だ!」というスローガンを思い出す)

 

物事に線を引いて白黒つける性格は、界の母親のものだったのか、それとも行政の本性だったのか。ただひとつ言えることは、どちらも、人を心から愛して救うことに役立つことがあるということだ。春菜の、児童指導員としての公私の線引きが苦手で、その線を踏み越えて行動してしまったさままでも、この「線を越える」という主題と響き合っていて美しい。我が子を崖から突き落とす行為が、生から死へと突き落とす行為ではなかったという裏切りまで象徴的に効いている。

 

山頂から街並みを見渡すくだりは、七海西高校の校舎の位置関係を説明し始めたので、なるほど後の高校での事件のための下準備なのね、と認識していたが、それだけでなく、今回の話の伏線・ヒントを散りばめるくだりでもあったんだな…… 見事にミスリードされた。

 

p.47 母との過去を界が語ったあとで、春菜が「あなたは立派よ」と言うところで泣いちゃった。

自分はやっぱり、殺人事件とか、憎悪や狂気が最終的に明らかになるような陰鬱な「ミステリ」よりも、人間の善性を最後まで手放さない、希望的な物語が好きなのだと思う。特に子どもの生がちゃんと尊重されてる前向きなもの。はやみねかおるなどの児童文学ミステリで育ったもんで……

子どもが大切にされている物語が好きなのって、たぶん、わたしはまだ自分のことを本質的には「子ども」だと思っているがゆえに、そういう物語を読むと、自分が大切にされていると感じて嬉しくて泣いてしまうからだと思う。自己慰撫にすぎない。わたしも「あなたは立派よ」と存在を肯定されたいから、琴線にも涙腺にも触れるんだろう。

 

しかも、最後の2ページでの海王さんの釘の刺し方まで完璧。そうなんだよ、この件はたまたま、「親の尊い愛」が明らかになる希望的な解釈を見出すことができたけれども、つねにそうとは限らない。「親の愛」という物語が普遍的だと信じることは危うい。
この件は、子どもに寄り添う立場である児童福祉従事者の「大人」、われわれにとって都合の良いハナシである。むしろ本当の仕事は、こういう風にポジティブな「物語」を見出せないような過去を抱える子どもたちに、それでもいかに寄り添って、生きていく希望を持たせてあげられるか、にある。親や、これまで関わってきた大人たち、社会に愛されず、存在を肯定されてこなかった子どもたちを、いかに愛して存在を肯定してやれるか。その子の心に届くかたちで。永遠の使命であり課題。

 

最初の話でこういう締め方をするっていうのは、これからの話ではもう、こんなに鮮やかに絶望が希望へひっくり返るような、よく出来た都合の良いものは描かないよ、という宣言か?

あと、前巻はそんなでもなかった気がする佳音さんの「どこか抜けてる」コメディチックな描写や設定も、なにかの伏線だったりする??

本巻の中心人物らしい遼もそこそこ描写されているが、これのどこがどう後々効いてくるのかさっぱり分からない。後々効いてくるんだろうな、という信頼から来る期待だけがある。

 

 


2/1(土)

冬の章2

なんか重要そうな人物や情報がいっぱい出てきて、全部覚えられない

 

 


2/2(日)

夏の章

春菜の母親の、ナチュラルな娘への性差別&結婚しなさいハラスメント発言がおもろい(おもろくない)

暸と仲の良い西野さんって屋上に来てた子か

発達の偏りで、サヴァン症候群的に映像記憶が凄い子、ぜったい何かのトリックに絡んでくるキャラすぎるだろ。記号的なデータキャラみたいになってるし。

 

あ〜これウランが青城学園のエースの男子と入れ替わって出場してたな 背格好同じくらいとか、延長戦で体力が甦ってたとか、以前の練習試合後に打ち合わせしていたとか、最前列からでも選手の顔よく見えなかったとか、監督の先生は観客席で眼鏡を無くしていたとか、審判が選手の動きに全然ついて行けてないのとか、延長戦でエースが転んでもすぐ起き上がって再開したのとか、ウランがそもそも女子人気あるのとか、女子は出場できないのに大して落ち込んでなかったのとか、ぜんぶ伏線だ。

延長開始時にキーパーの足取りが早くなってたのはなんでだろう。まさかキーパーと入れ替わってはいないだろうし。単純な入れ替わりじゃなくてもうちょい捻ってあるのかな。試合後にキーパーの負傷で両脇を支えられていたのは、キーパー本人じゃなくて両脇の子の顔を隠すためか。

にしても、前巻であれだけ性別トリックや影武者トリックを扱って、続編でもまだやるのか…… 
他の青城メンバーは他校の女子に扮装してるってことかな。やけに体格が良かったり、髪色がカラフルだったり、厚メイクだったり、がなり声や甲高い声だったり……
観客席で応援していた女子たちは本物?

 

……いや、これあれか、ウランだけじゃなくて、他の学園の上手い女子たちごと全員が延長戦で交代してるってことか。だからわざと点を入れずに延長戦にもつれ込ませたのか。
あらかじめ青城メンバーとサッカー女子たちが計画して、すり替えをバレにくくするために、女子人気が凄いという噂まで流していた、と。

流石に青城の副園長がグルじゃないとキツイ気がするが…… いや、対戦相手にバレてないのがいちばん非現実的だよな。そこも示し合わせてたのか?

春菜の用意してたクーラーボックスの飲み物は、その女子たちが飲んだのね

 

えぇ……単に女子にも出場させてあげようとして仕組んだことじゃなくて、また酷い虐待環境から脱出するために影武者を仕組んだのか…… そんなんばっかだな。

副園長の眼鏡は子どもが取ったのね

 

客の性別で席を区切るカフェ・ヴァーミリオンかなり不穏なんだけど。男性用の特別席とか嫌な予感しかしない

 

あ、そっか。ふつーに延長戦前に会場抜け出せばいいのかw カツラやメイクで女装はしてなかったw  すり替わって試合に出場する以外の女子たちもたくさん協力していたんだね。応援の人だかりが目隠しだと気付かなかったな〜

そうか、キーパーだけが最後まで残っていたから、春菜が共犯者となって車で逃したのね。11人全員はトランクに隠れられないよなぁ、もう10人は中央児相に着いてるっていうし……とは思っていたが、あのタイミングでウランと入れ替わって脱出していたとは。解ききれなくて悔しい。非常口付近に車を停めていたのも伏線だったかー

まぁ、キーパーだけでなく、動いているとはいえ流石に全員が女子に入れ替わっていたら気付かれるやろとは思うけどw キーパーはほぼ動かないから流石にバレるので無理、という線引きがちょっとウケる。

 

おぉい!! 片想いでも頑張った子どもが失恋しとるなやいか!!!
三角関係を見抜けなかった……

でも、異性愛に目覚めることを「女らしさ」や成長と結びつけるヘテロ中心主義には辟易しちゃうね。まだ二次性徴が進んでいない「少年」らしい少女たちの活躍というプロットがこういうテーマに収束してしまうのは残念だ。

 

ドン・ヘンリー "The Boys of Summer" 

少年たちの陰には必ず少女たちもいる。それはそう……なんだけど、別に女の子たちは、男の子の「陰」としてだけじゃなくて、彼女たちだけで存在していていいだろ、とも思う。この話はトリックの核心が入れ替わりだから仕方ないんだけど。

 

露骨な花言葉を背負ったハナミズキのブローチを付けてデートに臨む春菜と、高校時代の部活の仲間・高村くんの関係やいかに。実はめちゃくちゃ悪いひとだったらどうしよう

冬2を読み返したんだけど、この2人付き合うのか。
あと西野さんが修学旅行休んだの絶対伏線だろ 暸を誘ってヴァーミリオン・サンズにいる……怪し過ぎる

 


冬の章3

その怪しい西野さんに会う春菜
p.163 茜を「眼鏡してるんだ」と言うってことは、西野さんが会った時、茜は裸眼だった? でも冬2を読み返すと、校舎の時計を彼女は読めていたようだし、かけていたのでは? なんにせよこの辺りが非常に怪しい。春の章でもピクニック昼食時に友達の輪に入ろうとしない茜の描写は意味深だったし、そのあと遠くの色んな景色を見ては質問していた→目が良い?眼鏡をかけている?
手旗信号はぜったい関係してるよな

 

p.85 あと、冬2で、事件当日に暸が白い花柄のブローチを下げていたと語られているが、これは春菜がさっきつけていた貰い物のハナミズキのブローチじゃないのか。
そもそもヴァーミリオン自費出版してた花の本を暸がどういうわけかもらい、亜紀にあげていたのだから。ますます怪しい。

福永武彦『死の島』、ヴェルレーヌ『女友達』

 

おりもりお 回文だから重要人物? まさかまた暸とすり替わってるんじゃないよな
入口と出口が別なのも、このカフェの全てに怪しさを見出してしまう
カルメン・マキ&OZ「崩壊の前日」 その日学園祭で演奏されてた曲まで関係あるの?

 

 


2/3(月)

初秋の章

消えた寄せ書き そもそも樹里亜が捏造したもので、それにエリカは気付いていた?

モーリと暸は、転校前に崖で出会っていた。読み込めないCD
アルバトロスってアホウドリのことなんだ

p.218 ラディゲとか中原中也とかエゴン・シーレとかジミヘンとか、夭折したアーティストばっかり並んでる店だ

暸が付けてたブローチはやっぱり春菜があげたものだったんだ。本当に縁日の景品? 誰かに取ってもらった思い出の品?

リオが暸も「モーリ」と呼ばれていた事に気付いていたのは、リオの友人が自転車から声掛けたときの反応で察したんじゃないのかな。

 

縦読みとか裏面で読み込めたとか、単純な解決だった。「ねこ大好き」……そんなネットミームもあったなぁ 2010年出版だからそういう時期だったか。

天馬の映像記憶が早速活躍?しかけていた。

暸の手首がやけに描写されるけど、リスカ跡がCDの読み込み面みたく情報を圧縮してたりする?(サイボーグ暸)

リスカ自傷とは異なる目的でされていたとかはありそう

 

そして春菜の成長物語としての意味合いも強くなってきた。高校時代の高村くんとのエピソードにキュンキュンする。海王さんはいつもながら本当にいい言葉をかけて寄り添ってくれる。

春菜さんはなんやかんやめちゃくちゃ時間外労働をして子どもたちのためを思って頑張り続けているから偉いよ…… 自分ならとうにしんどくなって投げ出しちゃってるよ…… 児童養護施設の職員さんたち、ほんとタフだなぁ。尊敬する。

 


冬の章4

屋上でタバコ吸ってた松平士朗ってショーヘイのことだったの!?
屋上にいた数名たちの人間関係がなんだか複雑で覚えきれない。

リオの海にせり出したような高い場所に行く「奇行」には何らかの目的があるんだろうけど、なんだろう…… アルバトロス……滑空の実験でもしたかったのかな

リオとリョウ。確かに聞き間違えるか。名前違い、人違いトリックがめちゃくちゃ多い作品

 


晩秋の章

また人違いか。このひと望さんの父親じゃないだろ

物騒過ぎる 春菜の語りではややコミカルにも描かれているものの、状況はかなり緊迫している

 

すげぇオチだな……

ん? もしやこの宅配屋さんがのんちゃんの父親? 「のんちゃん」て言ってたし。カップ麺を食べての「こんなあったかいものは久しぶりで」という台詞も出所後だからか
とても物騒で、でも現実にはあり得なさすぎてコントのような感触のおはなしだった。
海王さんの春菜への忠告が、このあと嫌な形で回収されなきゃいいけど。

 

モーニングアフターピル大事

ヴァーミリオンの鏡張りも学園のプレイルームの同じワンウェイミラーなんだろうな…… 隠し部屋から男たちが女性客を窃視して品定めして、そのあと店から出て庭園の遊歩道を歩いているときに、さも偶然を装ってナンパする……
めちゃくちゃ気色悪い、胸糞悪い話やな

サナカをホテルに連れ込んだ若い男が、事後に慌てて出ていったのも色々と理由があるのだろう。組織絡みの犯罪じゃなかろうか。陵辱エロゲみたいになってきた。児童文学みのあるこの作品でそういうのは読みたくなかった…… でも前巻も児童虐待やレイプ被害を扱っているんだよな
これ暸も分かってて通っていて、サナカが被害に遭うであろうことも知ってて送り出したのだろうか。


2/4(火) p.311〜

>「凄いって思えるところがない子のことをいい女なんて思えない」
>それってどういう意味? 名探偵に憧れる北沢春菜としては論理的に考えなくちゃ。 p.314

草  少女漫画はじまった
てか「名探偵に憧れ」てるのか……

暸にあげちゃった白いブローチ、高校時代に春菜が高村くんから貰ったやつなんだ…… エモすぎる。ずっと大事に持ってて再会したらつけていくなんて大好きじゃん!!! 春菜さん心がまだまだピュアな乙女すぎるだろ

これで高村くんの海外赴任の話とかも伏線で、彼が悪い奴だったらショックで立ち直れないよ…… 春菜がというより自分が。

 

ヴァーミリオンのラックにある本やCDの並びもどんな意味があるのだろう…… 掛かってる音楽も怪しい。すべてが伏線に見えるし、実際そうなんだろうという信頼がこの作家にはある。

 


冬の章5

春菜のアパートの大家さんの娘らしい人も存在が怪しい。そんな人、何もないのに登場させる必要ある?

まず男女別席の時点で相当に怪しいんだよな 現実にそんな店あるのか
男性の予約席は鏡の前で、ミラー越しの予約席の女性客をじっくり品定めできるけど、他の男性席からもいちおう見れる感じなのかな。だから女性との二人連れでは席を移動してもらう必要があった。……いや、常識的に考えて、流石に何も知らない男性が事情を知ったら訝しむよなぁ。ワンウェイミラーだとは気付かないだろうから良いのか?


個人情報保護のためにちゃんと児童名をイニシャルでぼかすのえらい! それを前巻の佳音との会話でもやってほしかった。口が滑って本名いっちゃったのはご愛嬌

バンド演奏は窓の振動が扉の開け閉めと誤認されるための要素か

やっぱり、わざわざ校舎の見取り図を描いてるくらいなんだから、別校舎からの何らかの仕掛けや、西校舎3階から屋上への仕掛けがあるんだろうなぁ フェンスの破れの下が美術室と空き教室なのが怪しい。下から紐みたいなので身体を引っ張って落とした? 

ワイヤーがリオの写真にも関係しないかな。アルバトロス…… 別校舎へとロープウェイみたいにして張ってて空を飛ぼうとした? 地上にいた茜の目撃証言になにかトリックがあるのか。眼鏡の有無……

前巻のクライマックスを考えるに、いちばん怪しいのは高村くんって事になってしまう…… あのとき運動公園で春菜に再会したのまで計画のうちだったらどうしよう

茜が眼鏡せずに屋上の暸を見えたのはおかしいから、茜が嘘をついている?

大家さんの娘さん?がヴァーミリオンのマダムと同一人物の可能性ないかな

「崩壊の前日」の前の「イントロダクション」の存在 ここの時間差がカギなのか。なんもわからん

あなたの"量"じゃないのに? 睡眠薬とか? 煙草?

当てずっぽうで手当たり次第に予想・予感を撒き散らしたので、もうあとは開き直って解決編を読むか……

 

 

 

冬の章6

うーむ…… まぁたセクシャルマイノリティを謎の「真相」にする話かぁ。
修学旅行サボったのは高所恐怖症で飛行機に乗れないから。フィクションでよくあるやつ

無名の芸術家の作品を収集して画廊を開くような「教養のある」女性が、女性客を男性客に売るような店を作るのか…… 趣味が悪過ぎる

まーた児童の性被害トラウマかよ!!

えっ、茜の眼鏡かけてないはブラフだったんかーい!

高村くん……😭  でもこういう、「知っている筈のないことを喋っていたから犯人」系の仕掛けは苦手なんだよな。気付きにくいし、推理披露を読んでても疲れる。

高校時代のラケットで柿を打ち落とすエピソードも伏線だったんかーい!!

 

えっ それさえもブラフ!?!?
西野さんも茜も高村くんも、犯人っぽいと思わせていた人物を順に「犯人だと思った?違いま〜す!引っ掛かった〜〜!!」と嘲笑って切り捨てていくかのような…… じゃあ誰だよマジで。ここはもっとも究極にしてありふれた落とし所、春菜自身か?

 

 

 

********************************

 

 

 

えっ!!?!?!? どゆこと!?!?!?
うっわ………………  マジかよ…… リアルにゾワっと鳥肌が立った。
そういうことか。「冬の章」の一人称の語り手は、春菜ではなく佳音だったのか!!! 突き落とされたのは暸ではなく春菜。突き落としたのは他の誰でもなく暸。被害者と加害者、探偵と犯人の鮮やかな反転。

これまで探偵役だと思っていた人物が、すでに意識を失っている被害者だったなんて……  すげぇなこれ。これまで読んだ叙述トリックのなかでもいちばん凄いかもしれない。

 

そうか〜〜〜〜 海王さんの不穏な忠告も、すでに起きてしまっていたんだな…… 

前巻の黒幕というか、大伏線回収の張本人だった佳音さんが再登場して、良かった〜これで「特別」なキャラじゃなくてレギュラーメンバーとして物語に出演できるね、と喜んでいたけど、とんでもない。というか、まさに彼女が学園の「レギュラーメンバー」として馴染んでいたこと自体が最大の伏線になっていた。

前作すら今作のための壮大な前振りだと思ってしまうほどに…………

彼女が七海学園の学習ボランティアとして入り浸っていたのも、そして四季を振り返って現在と過去を行ったり来たりする語りの構成も、すべては大仕掛けの伏線だったのか………… すごすぎる。

過去と現在を交互に語っていると思ったら語り手が別人だったトリックは結構ありがちな気はするけど、完全に騙された。前巻と同様に、完成度が高すぎる!!!

そっか〜〜 屋上で「暸と話していた謎の誰か」は春菜だったのか…………

 

これって、作中人物には、誰にとってもまったく「謎」も「どんでん返し」もなくて、純粋にこれを小説として読んでいる読者を騙して驚かせるために仕組まれたものだよな。純度100%の叙述トリック。そもそも定義がそうなのかな。でも作中世界でも謎やどんでん返しを発生させるタイプの叙述トリックもあるような。

 

今すぐ最初から読み返したすぎる
あ、北村くんに褒められて、「名探偵に憧れ」ていると自認してたのも、佳音だったら頷けるな…… 全部が伏線じゃん。
前作であんなに名探偵に憧れていて、けっきょく探偵どころか黒幕・真犯人だった佳音さんが、今作では読者に気付かれないままに探偵として大活躍していたってことか……
そして、幼い頃から学園に入ることに憧れていた佳音さんが、大人になってボランティアという形で学園に入って児童と関わるようになったからこそ可能な叙述トリックということで、いろいろと感慨深い。

春菜は暸の問題に深入りし過ぎて当の児童からしっぺ返しを喰らったかたちか。そりゃあ海王さんが危惧する通りだわ。あの人いつも正しすぎる。

 

「あなたの"寮"じゃないのに」かぁ〜〜〜!!! 再びの鳥肌。チラッと脳裏を掠めなかったこともない言い換えだけど、まさか春菜が話し相手だとは思いもしなかったから、気付けないよなぁ……

 

究極の「人違い」トリックだった

伏線を張るのがうまいのと同時に、ブラフを張るのもうまいんだよな。前作で、この作者は伏線張るのがめちゃくちゃうまいことは思い知らされているので、読者はその気であちこち気になって伏線かな?と怪しみながら読む。それらのうちいくつかは実際に、ヴァーミリオンの真相とか、茜の眼鏡とか、回収されるかたちで結びつく。見抜いた読者はしてやったりと思う。しかし、そうした細かい伏線の束そのものが、いちばん大きなトリックを覆い隠すミスリードとして機能している…… わたしはヴァーミリオンの真相を早い段階で察して、もう満足してしまった。それこそが完全に作者の掌の上だった。
「トリックはトリックのなかに隠せ」を地で行っている

 

ただ、児童養護施設を舞台にしたミステリとして「いろいろと問題行動を起こしていた心配な児童が犯人」だったというのは、かなり座りが悪いというか、後処理が大変だ。なので、子どもに寄り添う物語としての本番はここからなのかもしれない。期待

 

過干渉もまた立派な児童虐待だよなぁ 自分を「恵まれているのに親の愛を受け取れない加害者」だと子どもに思わせて追い詰めてしまっていたんだから。
春の章のラストで海王さんが言ったことはここに響いてくるのか〜 「親の愛」を信奉して称揚し過ぎるのも、子どもにとって暴力になることがある。(もちろん、親側への負担にもなるだろう)
親の愛情という名で子どもを支配して搾取する行為

 

児童養護施設という舞台設定があるので「毒親設定で物語をまとめるの多すぎ」とか「児童虐待や買収などの胸糞悪い話多すぎ」という文句もあまり適切ではなくなる…… そういう境遇の児童が集まりがちなところだから。

てか、この暸の告白を聴いている佳音だって性虐待サバイバーなんだよな。そうか、西野さんの性被害の話に「あなたの気持ちがわかる」と力強く言ってたのは、春菜じゃなくて佳音だったからか…… ちょっとは引っ掛かったけど、そういうことだとは思わないじゃん

 

春菜が必死に暸に向き合おうとしてきたことは、本人にもちゃんと伝わってるよ……😭
春菜さん、""光"" すぎる。こんな立派な、子どもに寄り添って命をかけられる大人がいるのか。そうじゃないと児童養護施設では働けないのか

春菜が渡した白ブローチが重要アイテムなのは、ハナミズキ花言葉ですれ違いが起きたから。
やっぱり花言葉なんて滅んだほうがいいよね!
ていうか、花に過剰な意味を見出そうとする人間が悪い。

咄嗟に突き落としちゃったあとに何とか他の人からバレずに屋上から逃げた暸を想像するとちょっと滑稽というか苦しい。動揺もいき過ぎるとかえって平静よりも土壇場で思い切った冷静な行動ができるようになる例か

CDケースに書かれたRが鏡文字でロシア語なんじゃないかとは一瞬思ったけど(後出し孔明)、そうだったのかよ

モーリエ 死から海へ……

こうして立て続けに希望的な解釈を並べられると感動しちゃうな。本当にあっているかは分からないけど、春菜も佳音も、暸のために全力で、なんとか彼女を救おうと解釈を語っている。生きてもらうために。

死にたがりの少女に、自らを加害者だと思っている被害者の少女に、生きてもらうために、呪い=赦しを与える。アルバトロスのように、醜くもがきながら生きてみせよと。あなたはもう自ら死ぬことはできないのだと。

 

この章の最後まで「佳音」の名前は出さずに書き切った。粋だなぁ
まるでこのシリーズの主人公は初めから佳音で、海王さんがメインヒロイン?だったかのような
ここの関係がいちばん深くて長いんだよな。

 

 

エピローグ

えっ!?!? 佳音→高村 も好意があったの!? まさかの三角関係!?
流石に、佳音と高村が仕事上で知り合っていた、というのはこのトリックを成立させるための苦しい言い訳だと思うが……
春菜が佳音を「ぼんやりさん」と呼ぶことにそんな深慮が!? さすがにそれは彼女を神格化しすぎでは。
しかし、佳音の春菜へのそれは「巨大感情」と呼んでも差し支えないもので、だからこれは百合なのかもしれない。

もしこのシリーズの主人公が春菜ではなく、男性だったらたぶんわたしはこういう締めくくりにかなり腹を立てていたと思う。命を賭して子どもを救った英雄として本人不在の状態でみんなから神格化されるのが気持ち悪いから。そこに男性的?な欲望を感じ取って。

 

おわり!!

うわ〜〜マジかよ!! 最後まで意識取り戻さずエンドかよ!!!
エンデの「だからこそ」という名言をそのまま踏襲したかたちか。すげぇ潔いというか、やり切ってるなぁ……
ある意味、探偵として他人の問題に首を突っ込み過ぎた主人公がしっぺ返しを食らって意識不明の重体になったまま終わるバッドエンドのようでもある。名探偵の傲慢さを糾弾する系譜 でももちろん、ちゃんと読めばそうではないことは分かる。

ミステリとして見たらめちゃくちゃ完成度高いけど、エンタメ物語として素朴に読んだら読後感が「主人公が意識取り戻せないまま終わっちゃって可哀想😢」になる人もいないかなぁ(余計な心配)

あと、これ本格ミステリではないだろ 核心のトリックがめちゃくちゃ大振りかつ完成度が高いだけで、それ以外のところのロジックは結構いろいろとガバガバで苦しいところがあるし……
本格ミステリではないからこそ傑作、という節はあるかも

 

とりあえず最初から読み返そう…………

 

 

 

 

hiddenstairs.hatenablog.com

 

 

 

スピンオフがあるらしいので読む