『パンタグリュエル』フランソワ・ラブレー(1532)
つづき
宮下志朗 訳
2023/4/9日~14金
『ガルガンチュア大年代記』
4/9日 p.386~405
4/10月 p.406~445
確かにラブレーよりはお下品さや諷刺、破天荒さや文章の豊かさ(?)が落ちるかもしれないが、とはいえこれはこれでわりと面白い。ガルガンチュアの虫歯の穴のなかにテニスコートがあって、そこに50人の捕虜を入れて収監中退屈させないでおく……とかすごい発想だ。
パンタグリュエル(本編)
4/10月 p.14~77 作者の前口上から第5章まで
p.18の注3に引用されている『エセー』の警句が興味深い。
デモクリトスとヘラクレイトスの二人の哲学者のうち、前者は、人間性を空虚で笑うべきものと考えていたから、人前に出るときには、かならず顔に微笑を浮かべていたが、後者は、この同じ人間性に憐憫と同情を感じていたから、いつも悲しげな顔をし、目に涙をたたえていた。(中略)わたしは前者の心持ちのほうが好きだ。泣くより笑うほうが愉快だからではない。前者が、後者よりもいっそうわれわれを侮蔑し、非難しているからである。(中略)われわれ人間に特有な性状は、おかしくも笑うべきものである。
(モンテーニュ『エセー』1.50、原二郎訳、岩波文庫、1965年)
ところがパンタグリュエルが、脳みそをしぼって勉強したのかといえば、とんでもない話で、視力が落ちるとかいって、全然しなかったのである。某教授が講義で、「目の病気ほど、視力に悪いものはないのである(26)」と、しょっちゅう話すものだから、なおさらなのであった。
ある日、知り合いの学生で、学問のほうは、自分の知力しかないものの、その代わり、ダンスやテニスはとてもうまい男が、めでたく法学士の称号をちょうだいした。 p.76
注(26) 「自明の理 lapalissade」と呼ばれるコミカルな技法で、第二章、第三章の最後の落ちにも使われていた。次の段落の、「学問のほうは、自分の知力しかないものの」も同様のおふざけ。
小泉進次郎構文もこの頃からあったのだなあ
4/11火 p.78~p.167 6章から13章まで
図書館に収蔵されている書名を139冊ぶん延々と羅列する第7章。IPPON! グランプリの、存在しない料理を即興でふたりで交互に言い合うやつみたい。大喜利が強いタイプの作家ラブレー先生。たまに実在する本も入れ込んでくるところに諷刺が効いているらしい。
父ガルガンチュアからの、ジジくさい(=父権的な)手紙で構成された第8章も、最後の最後で「ユートピアより」と書かせることで内容を相対化させるとか、ズルいけどうめぇな~~ってかんじ。
第9章……ついに噂のパニュルジュが登場した! すげぇw 一瞬にして強烈なキャラ立てに成功している。「腹が減ったから何か食わせてくれ」というのをパニュルジュが13カ国語で駆使して話し続けるが、一向に意味を解してもらえないという千鳥やランジャタイもびっくりのしつこ過ぎる天丼コント。しかもうち4つは「架空語」で、なのになぜか訳注で戯訳が付いてるのおかしいだろw
(10) まったくの架空言語だけれど、ポンスの解読例を参考に戯訳しておく。 p.127
じゃあないのよ。なぜ解読できるw 訳注も含めてコメディになっててすごい
11,12,13章のナンセンス口頭弁論パート、とんでもないな。発想はあってもここまでやりきるか。最後の収集の付け方もお見事。これにはパンタグリュエル殿の才覚に惚れ惚れするしかない。
4/12水 p.167~274 13章から23章まで
パニュルジュが悪漢すぎてヤバい。ダークヒーローとかすら形容できないほどヤバい犯罪者で面食らう。セクハラ・ナンパ・性犯罪はお手の物、いたずらと称して薬物を公道にまき散らして大量殺人を犯すカルト宗教テロみたいなことを1人でやってるし。主パンタグリュエルもそれをぜんぜん咎めないで誉めそやす。パンタグリュエルの裏側、負の部分を切り離して擬人化したのがパニュルジュとか言われてるらしいけど、こいつら2人ともやべーやつでは??
17章ではなぜか唐突に「作者」アルコフリバス・ナジエが登場してパニュルジュと一緒に免罪符巡りをする。
19章。関節を外したような圧倒的な言葉の洪水による弁論パートをやったしばらく後で、今度は「身振り」のみによる議論(?)をするという構成がにくい。シャモワゾー『カリブ海偽典』の副題が「最期の身ぶりによる聖書的物語」だったと思うけど、やっぱりフランス語文学では伝統的に「身振り geste」を重要視するのだろうか。インフィニット・じぇすと!
23章。距離の単位「リュー」がフランスでは他国より短い理由を下品にでっち上げる。単に各地域で比べるのではなく、パリを中心として放射状に広がっていくイメージのなかで理屈付ける点が、当時の(フランス人の?)世界認識を象徴しているようでなんか好き。
4/13木 p.275~352 24章から30章まで
パニュルジュを筆頭に、パンタグリュエル幹部の四天王みたいな連中が出てきた。
なろう系もびっくりの俺TUEEE状態で進んできたパンタグリュエルを一瞬ピンチにするくらい良い勝負に持ち込めたルーガルーさんは誇っていい。
幹部がエピステモンの「地獄めぐり」見聞録を披露する30章。「デビルアローは超音波、デビルイヤーは地獄耳……」が脳内にチラついて仕方ない。
4/14金 p.353~ 31章から34章まで
おわり!!!
征伐編の佳境で、作者アルコフリバスが再登場してパンタグリュエルの口の中に入って暮らして出てきたら半年経ってすっかり戦いは終わっていた、という展開すごいな。そういうやり方があるのか。
つづき↓
前巻(執筆されたのは後)
