『赤村崎葵子の分析はデタラメ』十階堂一系(2013)
2025/1/13(月祝)〜16(木)
3日間
1章 ラブレターを分析する
男主人公たちは高2。他人の痛みに敏感であれ、という両親の教えから物語が始まる。どう回収されるのか。
男主人公トキオと葵子(テル)のボケツッコミのやり取りにまだ慣れておらず、やや寒い ラノベではヒロインがボケ、男主人公がツッコミの構図は一般的。まだ赤村崎さんのキャラは掴めていない。エキセントリッククール系かと思いきやふつうにトキオに脇くすぐられて悶えたりもしてるし。トキオとは熟年夫婦感もあるツーカーな関係に見える。
章末の「チャットルーム」パートであっさり事件が解決される構成か。本編でテルが(分かっていたにもかかわらず)推理を披露しなかった理由まで付ける。わざとデタラメな「分析」をしていたということか。これウミガメにできねぇかな……と考えてるけど、ミステリで解決時にうまくハマって納得感を高めるための幾つかの手がかりを、ウミガメでは問題文として初めから出しておくのはあまりに不自然な気がする。だから質問で徐々に手がかりも見出してもらうかたちになるんだけど、それはさすがに誘導ナシでは難しすぎるジレンマ。
妹トミノが好きな人ってお兄ちゃん? 同学年にいるならわざわざ4階の教室前を兄とラブラブな感じで歩かないだろう。
にしても、シリーズものミステリの最初期にありがちな「犯人が身内(今後のレギュラーキャラ)」のやつ好きなんだよな。松原秀行とはやみねかおる育ちなので……。
1/15(水)
2章 ドネーションを分析する
相変わらずずっと夫婦漫才をやっている 毎週末ゲーセンでのカモトキのランクをこっそり翌日にテルが塗り替えてるのワロタ
変なことに突っ走って男主人公を振り回す、古き良きハルヒ系ヒロイン。かつ探偵役。
カモトキくんはぼやきながらも丁寧にツッコむ。
テルの「分析」をカモトキがあまり聴きたがらないのが良い。ありがたく拝聴していたら相当ウザいので。物語自体に分析・推理を茶化す視座がある。変人の探偵が勝手に爆走しているのを冷ややかに眺めているような。
しかしたまにカモトキの発言にテルがツッコむこともある。段々このふたりの掛け合いが楽しめるようになってきた。
東藤巡ちゃん。堂々巡り。高身長天真爛漫アホキャラ。これまたなんとも言えない素朴なサブヒロインだ…… 章ごとに3人目のゲストキャラを招くのか。
p.107 「滔々と」へのツッコミ草
またなんか良い感じに真相がチャットルームで明かされて終わった。寄付と尾行が「人を救いたいという心」で繋がる。テルが本編でわざと誤った推理をする理由付けまで毎回行うのか。
あとチャットでのWillhelmが本当にテルと同一人物なのだろうか。トキオはカモトキくん?
今回の真相の納得感は……微妙かなぁ。ケータイをチラチラ見たり目を離したりしてたのがバス酔い対策だというのも呆れちゃう。
1/16(木)
3章 ディテクティブを分析する
また色恋・嫉妬関連の犯行動機か。テルは優しいなぁ 毎回人を傷つけないようにわざと的確な推理をせずに道化を演じる。ちょっと夢水清志郎っぽくもある
犯人は化学部1年の近藤くんってこと? なんかめっちゃトミノの机の匂い嗅いでたし。
てかそれよりも、大戸三雫さん何なんだ。こいつがWillhelmだったのか……テルの「ヴィルヘルムが囁いている」とかいう口癖を同室で聴いて拝借したのか。
ん? これまでチャットルームで真相を推理してきたのが三雫さんだとしたら、テルは道化を演じるとかじゃなくて本当に的外れな分析をしていただけの可能性もあるってことか。
名探偵は誰かという謎、トリック、フーダニット。テルや三雫という人物の本性を謎として提示していく。
シンプルに三雫さんのキャラデザは萌えですが……
東藤めぐるさんもいいキャラしてる 絶妙なかき回し賑やかしポジション
物語の基調はずっとハイテンションなコメディなのに、ちゃんと複雑な仕掛けのミステリもやっててすごいなと思う。
4章 ヴィルヘルムを分析する
「テル」がヴィルヘルム・テルから取られていることに今更気付いた。
三雫さんはわざとカモトキくんを騙そうとWillhelmのHNを使っていたわけじゃないのか
ん? カモトキとWillhelm=三雫は、高校入学前からチャットしていたのか。じゃあカモトキはテルよりも三雫さんとのほうが付き合いが長い? そして三雫とテルも大戸兄繋がりで幼馴染……と。大戸三雫さんが重要人物すぎる。てか三雫ってどんな名前だよほんと。
これ幼馴染百合の可能性あるよね?
>さすがアメリカ人の話す言葉を仕事にするだけあるな……。 p.235
冗談にしてもヤバすぎる!
身近な憧れの人の死を媒介にして繋がるふたり。死の三角関係-幼馴染百合?
にしても、よくこんなにも毎回、多重解決モノというか、わざわざデタラメの分析の内容と、それをでっち上げる理由まで考えつくものだ。
これ、ここに来てテルの本命が今は亡き大戸輝明だと明かされる精神的な寝取られとも読めるな。これまで男主人公にベタベタくっついていちゃついていたのは、幼い頃からの想い人が死によって完全なものになってしまったから、あとはもう遊びで他の人と戯れるだけ……みたいなモード。
うわ〜そうか、本命が別にいたのはカモトキのほうも同じか。しかもこちらは勘違い。
テルとカモトキ。それぞれヴィルヘルムとWillhelm──大戸輝明と大戸三雫──という、より大切な相手がいたのに、片や死別による代替物として、片や勘違いによって、これまで1年間互いにくっついて過ごしていた。これは……いいな。珍しく好きな二者関係だ。これまで一緒にいた高校生男女の関係の破綻。かなりトロピカルパフェです……
大戸兄妹を含めて四者関係といってもいい。
他人の痛みに敏感なカモトキくん実は攻撃性・嗜虐性があった? そうなの? ぜんぜん納得いかない。
えっ!? どういう終わり方!? スパッと別れないの?? なにこの「私たちの分析はまだまだ続く」エンドは!?!? ラノベだからあまりにもバッドエンドっぽいのは許されないのかな。
裏分析コーナー
Willhelm=三雫さんの推理の真偽をも引っ掻き回してひっくり返していく。けっきょくテルや三雫の分析はデタラメなのか、宙吊りにされ続ける。うーむ……探偵の推理を相対化するのはいいけど、ここまでやるとそれはそれで嫌だな。宙吊りであること自体がなにか重大な意義を持っていればいいのかもだけど。
3章のトミノを好きな犯人って神田なつみさんだったの!?
そして、ラストのカモトキはやっぱりテルのことがどうでもいいわけではなく、なんやかんやで好いている……というハピエンにひっくり返そうとしている。日和ったな。
まぁそりゃあテルのこと嫌いではないだろうけど。。てかWillhelmとチャットしてたのって高校でテルと知り合う前からなんだよね? ならやはり、個人的には互いに一番の相手ではないことに気づいて破綻するほうが好きだな。
・感想まとめ
ミステリのお決まり的な推理(分析)そのものの非厳密性や誤謬性(総じて "デタラメさ" )を主題として、何重にも真相がひっくり返っていく物語は比較的好みではあった。しかし、理由があってわざとデタラメな推理をしている場合と、本人は正しいと思っていても間違っている(結果的にデタラメな)場合とが混在するどころか最後まで峻別されない点が多々あり、単に煙に巻いているだけなんじゃないかとも感じてしまった。『密閉教室』とかもそうだけど、そういうメタミステリというか、ポスト・ミステリみたいなことをミステリのジャンル内でやられてもモヤモヤが残るだけ。(幻想文学など、はじめから「真理なにそれおいしいの?」な作品だったらいい) あとがき後のおまけコーナー的な裏分析編も、さらにどんでん返ししているというよりも、厳密に考えたら本編での推理にも穴があることの言い訳だったり、別の可能性も思いついたから言い得だと思って書き足しているだけだったり……と悪し様に捉えてしまった。何重にも真相が書き換えられるのは、そうであるように精巧に構築されているのではなく、そもそもひとつの正当の推理を当てはめて解決することができない穴だらけ・矛盾だらけの破綻した内容なのではないか?
「推理」ではなくあくまで「分析」を掲げているのも、その差異に意味を見出しているというよりも、なにか文句を言われたときの逃げではないかと思えてくる始末。これは「推理」モノ(ミステリ)じゃなくてあくまで「分析」モノなので……的な。
作中では語られていないが想定はされている「真相」があり、丹念な精読によって読者はそれを分析してみせよ、という読者への挑戦状形式のミステリなのだとしたら、それはそれでムカつく。解答がきちんと書かれていない問題集は作者の怠慢の産物だと思っているので。作者だけが悦に入っているのはプロ失格では。ちゃんと真相を開示するところまで物語として上手く描けない作者の未熟さの現れでしょう。
キャラは大戸三雫さんが素直に萌えでした。
ただし、テル(葵子)とカモトキの関係の実態が最終章で明かされてからは、グッと評価が上がった。閉じた二者関係じゃなくて、他の人物が介在する関係が好きなので…… ラブコメラノベの男主人公とメインヒロインとが、互いにフラれるというか、もっと大切な人が相手にはいると知って動揺する展開を初めて読んだので新鮮さがすごい。まぁラストにはそれでもふたりの関係だって大事だよね、相思相愛ではあるよね…という微温的なかんじにまとめられてしまい残念ではあったが…… やるなら徹底的にやってほしいですね。
続編は配達待ち中です

