『V.』でピンチョンデビューしてから、『競売ナンバー49の叫び』, 『重力の虹』, 『スローラーナー』と出版順に読んできてるので、とうぜん次は本書。
しかし来月にはいよいよ『ブリーディング・エッジ』が出版されるらしいし、それまでに読み終えられる気がしねぇぜ
いま、↑こっちの版のヴァインランドがネットで手に入りにくくなってて、書店をいくつか梯子してようやく見つけた。ありがとう紀伊國屋書店 梅田本店。梅田ジュンク堂にも無い本が意外と置いてあったりする。
今年の年明けに数ページ読みかけて止まっていたが、このたび本書を一緒によむオンライン読書会(まるで自分のためのイベント!)が開催されるということで、久しぶりに引っ張り出してきた。『コレラの時代の愛』?……うん、まぁちょっと枕元で休んでてね。
主人公ゾイド・ホイーラー。14歳の娘プレーリーのパパ。わざとヤバい振る舞いをして精神障害者用受給を貰ってるっぽい。
ゾイドってあのロボの怪獣が出てくるかと思ってたら名前なのね。でもゴジラ出るんでしょ?
ゾイドが取り出したのは、婦人用オーダーメイドのチェーンソー。「立木を倒すパワーを貴女のバッグに」とCMがうたうもので、ガイドバーにも握りにも蔽いにも本物の真珠貝が張ってある。 pp.13-14
いきなりチェンソーマン出てきて草
どこまでが本気でどこからが冗談かわからないこの感じ、ああ今じぶんはピンチョンを読んでるんだなぁとテンションが上がる。
1984年夏。音楽もファッションも労働環境も、アメリカ社会全体がお行儀よく新たな時代に向かいつつあるらしい。
時代の流れについていけないあぶれ者の中年男性がいろいろやらかす話なのかな。
『スター・ウォーズ ジェダイの帰還』〔1983〕 ジョージ・ルーカス監督。観たいな。
p.16 砂糖菓子のトラック!?
「オマエの窓破りには、いまじゃ戦略的な価値もついてるんだ。いまさら新しい手に走ったりしてみろ、州の役所はコンピュータのオマエの情報を打ち直さなくちゃならなくなるな。これは心証を悪くする。この男は反抗的だ、ってことになって、小切手が届くのがだんだん遅れることになるぞ。(後略)」 p.16
精神障害者用受給目当てにする窓破りという社会への犯行でさえも、マスコミやお役所といった社会のシステムに内包され管理される絶望をユーモラスに描く。お行儀よく「クレイジー」な反抗をしないと反抗的だとみなされるという倒錯。
「しょうがねえなあ。まあいつか、ショーのほうがオレ自身よりビッグになる日がくるだとうと覚悟はしてた」 p.17
同上
ゾイドの相棒ヴァン・ミータ。元ベーシストのバンドメンバー
あ、北カリフォルニアなんだ。
お〜、この〈キューカンバー・ラウンジ〉(通称キューリ)が今回のダメ人間たちの溜まり場か。『V.』のヤンデルレンみたいな。
むかしゾイドがTVで見た日本がテーマの番組では、東京とかの狭い団地に人間たちがひしめき合いつつ、それでもみんな礼儀正しく暮らしていた。民族の長い歴史が育んだ知恵というのか、窮屈そうな空間で仲よく暮らす術が見られた。だから、いつも求道を口にしているヴァン・ミータが、キューカンバー・ラウンジの小屋に移り住んだと聞いて、ゾイドも期待したのだった──その暮らしに、日本的な静寂が伴うことを。しかしそれは大ハズレ、人口過密を処理するのにこの "コミューン" が選んだ方法は、エネルギーの抑止でなくて解放、つまりデシベル値のきわめて高い、容赦なき罵り合いで、これがまもなくセレモニーと呼べるだけの荘厳さを帯びるに至る。争いごとの見えざる背景を記事にした「毎日口論」とかいう名の家庭内新聞まで発行された。罵倒は森を越えてフリーウェイに鳴り響き、ゴーゴーと走る18輪トラックの運転手の耳にも届いた。あるものはそれをラジオ電波の混信と思い、あるものは成仏できぬ霊の叫びと思ったという。 p.18
文章の加速とともにホラ吹きのギアが上がる感じが最高。
さっきからちょくちょく日本に言及してくるな。80年代って高度経済成長期だっけ?(無知)※いや、wikiによると73年で終わって安定成長期だったらしい。
毎日口論は草。上手いこと訳したな〜原文知りたい。
あとラジオの混信ネタ好きだな〜V.や重力では海軍無線とか海を渡る混信だったような気が。
やっぱりピンチョンの文体の根っこってハードボイルド探偵小説の文体なんだよなぁ。ハードボイルド探偵小説読んだことないけど
三人称の語り手が饒舌に好き放題あることないこと弁舌を振るうのが好きだなぁ
トレードマークが "「傷つけられた正義」の顔" って凄いなヴァン・ミータ
p.19
ESPって何?→「Extra Sensory Perceptionの省略形」wiki 超感覚的知覚 ふーん…
DEA捜査官って何?→麻薬取締局(Drug Enforcement Administration) ふーん…
DEA捜査官ヘクタ・スニーガ。ゾイドの宿敵ってところか。訛りがすごい
〈キューリ〉の支配人ラルフ・ウェイヴォーン・ジュニア。シスコのドンである父親からの仕送りでやっているおぼっちゃん
シスコって何?調べたらカルフォルニアのコンピュータ機器会社がヒットしたけど、設立が1984年12月……ギリギリまだじゃん!
ゾイドは息を整えマントラを唱えた。ヴァン・ミータが去年、それまで凝ってたヨガ熱が冷めてきたころ、ほんとは100ドルするんだが特別に20ドルにしとくからとゾイドに無理矢理売りつけた呪文だが、ゾイド自身まだ、それを使う機会はなかった。 p.21
マントラって売り買いするものなの…?
窓に相対して突き破る前後の描写、映画の冒頭のつかみ感があって良いなぁ
「砂糖菓子のトラックも待っている」はそういうことだったのね
新たなトラブルが確実に予感された。ゾイドはこれまで自分を情報源にしようとするヘクタの執拗な攻撃に耐えてきた。テクニカルな意味では「童貞」を保ってきた。 p.22
スロースロップは幼少期に既にテクニカルな意味で童貞喪失してることになる。
p.23 文章うめぇ〜
p.23で第1章終わり。章番号も章題もない
ピンチョンwikiによると全15章。
続き
『重力の虹』を読んだ証拠としていちいち自慢気に貼ってるやつ